激怒し婚約破棄してきた彼はその後不幸に見舞われ続けることとなったようです。
「お前との婚約なんぞ破棄だ!!」
凄まじい鬼のような形相で宣言されたのは、ある日の夕暮れ時だった。
婚約者ルブーレはそんなに怖い人ではなかった。
それだけに驚いた。
ここまで鬼のような顔になれるのか、と。
「お前は俺の誘いを断り続けている! もうひとつきも! もう許さん! そんなに嫌なのなら……望み通りにしてやろう、婚約破棄だ!!」
理不尽だ。
そんなことで激怒し切り捨てるなんて。
子どものわがままか。
「私はもう少し待ってほしいと言っているのです」
「くそが!」
「なぜそのようなことを仰るのですか」
「お前がくそだからだ!」
これはもう……会話にならないやつだ。
諦めよう。
「分かりました。では、婚約は破棄ということで、承知しました」
「お前との日々は最低な日々だった!」
酷いことを言うのね。
別れしなにまで。
◆
その後ルブーレは痛い目に遭ったようだった。
まず婚約破棄の翌日に可愛がっていた愛犬が謎の死を遂げた。
そしてその遺体を捨てに行く最中で事故に巻き込まれ同行してくれていた幼馴染みの女性も死亡。
涙ながら実家へ帰ってくると父親が知らない男たちと喧嘩しており、父親は男に刃物で刺され死亡――さらに自身も運悪く巻き込まれて負傷してしまう。
さらに、その傷の治療中、医師に誤った処置をされて何度も痛みに絶叫することになる。
それから数日が経ったある日、妹は、気味が悪いと言われて婚約破棄された。そのことに悲しんでいた妹は、ある晩こっそり家から飛び出ていってしまい、山で亡骸となって発見された。唯一の救いは亡骸がまだ綺麗な状態だったこと。
しかし、続く不幸に絶望した母親が三階から飛び降りてしまい、意識が戻らない状態となる。
こうしてルブーレは家に一人ぼっちになってしまった。
◆終わり◆




