このたび婚約破棄されました。~愛とは、想いとは、永遠ではないのだと……その日知りました~
愛とは、想いとは、永遠ではないのだと――その日知った。
「悪いな! もっと好きな人ができたんだ。だからお前との婚約は破棄する! そういうことだから、じゃあな」
婚約者リブーリエンがそう告げてきたのは唐突なことだった。
彼と私は互いを想いあっていたのに。
私は何も変わっていなくても、彼の心は変わってしまった。
「それがさ、とっても素敵な人なんだよ。お前にも見せたいくらいのさ、紹介したいくらいの見事で完璧な女性でさー。ああもう会いたくなってきちゃったよー」
そう話すリブーリエンは夢でもみているかのようだった。
きっとそれを恋と呼ぶのだろう。
それは一種の夢。
いつかは醒めるかもしれない、けれどもただなかにあっては決して逃れることができない、そういうもの。
彼もいつかは夢から醒めるかもしれない。
けれども今すぐには無理だろう。
今の感情が永遠ではないとしても、当分は彼はその恋という夢の中を泳ぐはずだ。
そして、いつか夢から醒めた時、彼の心が私へ戻るという保証はない。
むしろ戻らない可能性の方が高いのではないだろうか。
数値的な根拠はないが。
きっとそうだろう。
そんな気がする。
つまり、私がどうあがこうとも、奇跡でも起きない限り彼の心を取り戻すことはできないのだ。
「そう……さようなら、リブーリエン」
私の想いはもう終わりにたどり着いてしまった。
もう彼とは歩めない。
彼と行く道はもうここにはない。
◆
あれから数年が経った。
私は、ある年の夏頃に王都で開催されたあるお茶会にて出会った金髪の青年と結ばれ、今は子育てのため忙しくしている。
毎日はとても大変。
賑やかなところは悪くないけれどたまには寝不足で苛立つこともある。
ただ、それでも、不幸とは思っていない。
それに、周囲はとても温かく私を見守ってくれているので、そういう意味では私はかなり幸運な人間だと思う。
忙しい日々の中でも楽しさを見つけて生きてゆく。
それこそが人生だ。
今はそう思っている。
ちなみにリブーリエンはというと、あの後自覚なく危ない人の女に手を出してしまっていたために残虐な殺め方をされてしまったそうだ。
◆終わり◆




