これで三度目、もうさすがに許せません。婚約は破棄します。もうおしまいにしましょう。
「貴方との婚約は破棄します!」
そう叫んでいるのは――私。
婚約者ウィンデルはまたしても裏切った。
これで三度目。
また他の女にこっそり手を出していた。
「証拠も集めています、親にも話はいっています、ですから貴方とはもうおしまい。後は手続きをして償いのお金の支払いをしていただくのみです」
これで三度目、もうさすがに許せない。
これまでは許してきたけれど。
こちらにも我慢できる範囲というものがある。
何もかも耐えられるわけではないのだ。
「待ってよぉ~、あれは本気なんかじゃないんだぁ~」
彼はそう言って泣いてみせる。
でも無駄だ。
もう騙されない。
彼はこうやっていかにも反省しているかのように謝るけれど、それはいつものことで、しかもその謝罪は行動にはまったくもって反映されないのだ。
「何を言っても無駄ですよ、婚約破棄は既に決定したことですから」
「嫌だよぉ、離れたくないよぉ~」
これまで謝罪を受けて許してきた私にも非はあった。
もっと厳しくするべきだったのだ。
「さようなら、ウィンデル」
◆
あれから数年、私は父の知人が紹介してくれた王族の男性と結婚することになった。
結婚を見据えながら交流を重ねていた時期、私は、その身分ゆえに周囲から悪く言われることがあった。温かく見守ってくれる人がいる一方で、嫉妬を憎しみを私へ向ける者もいた。でもそんな時彼はいつだって私の味方をしてくれた。私を守ってくれた。
だから私は――彼と行きたいと思っている。
たとえ険しい道だとしても。
それでも彼と共に進みたいのだ。
――そうして迎えた結婚式、その日は多くの祝福を得ることができた。
「ありがとう、共に生きることを決めてくれて」
「お礼を言うべきはこちらです……これまで色々あったけれど、守ってくださってありがとうございました」
「そんな! いいんだよ、こちらこそ勝手なことばかり言って、ごめんね。そして、共にここへ来てくれてありがとう。きっと幸せになろうね」
彼は王族だが多分王にはならない。
でもそれでいいしそれがいい。
王の妻になるのはさすがに厳しいから。
「はい! よろしくお願いします!」
「よろしく」
そうそう、そういえば。
ウィンデルはあの後三人同時に恋人としての関係を築いていたことがその中の一人の女性にばれてしまって、激怒した女性に金づちで十回以上叩かれて死亡したそうだ。
金づちで叩かれるとは――なかなか恐ろしい、想像したくない。
でも、あれからも懲りずにそのような行為を続けていたとは。やはりウィンデルは反省していなかったようだ。同時に何人とも恋人のような関係になるなんて、さすがは彼、といった感じだ。そして、個人的には、あの時離れていて良かったと心から思った。
◆終わり◆




