親に雑に扱われ、婚約者からは婚約破棄され――だから願ったのです、この世界の終わりを。
その日、私は願った。
これまで生きてきた世界の終わりを。
◆
思えば辛いことや悲しいことの多い人生だった。
生まれた時から優秀な姉と比べられて親からは出来損ない扱いをされていた。そして、ことあるごとに、姉が何か成功するたびに、嫌みを言われた。日頃は嫌み以外の面では私のことなんて放置なのに、親の機嫌が悪い時はいつだって私が当たり散らされて。時には手も出されて。そんな時、姉はいつだって見て見ぬふりをしていた。気づかないふりで素通りするだけ、当然助けてなんてくれない。
そんな環境で育った私にも年頃になるとルイーズという婚約者ができた。
しかし彼は初対面で言ったのだ。
こんな女かよ、外れだ――そんな言葉を。
「お前じゃなくて姉なら良かったんだがな」
それが彼の口癖だった。
それでも何とか関係は続いていて。
しかしついに告げられてしまう。
婚約の解消、婚約破棄、その言葉を。
「お前とはやっぱ無理だわ。外れ過ぎる」
婚約者ルイーズに捨てられた私は、実家へ戻ると親に激怒され、その日のうちに死を選んだ。
そうして訪れた白色の不思議な世界にて、私は願ったのだ――世界の終わりを。
それからは愉快だった。
だって願いが叶い始めたから。
少しずつ、少しずつ、壊れてゆく。
私の両親は母の浮気一歩手前の行為によって喧嘩が堪えなくなり、当たり散らす私がいないことでさらにエスカレートし、最終的には離婚に至った。そして、その時仲の良い婚約者がいた姉は、婚約者から「親が離婚した人とは……ちょっと無理」と言われ婚約破棄されて、そのことによって絶望して自ら命を絶った。
一方、ルイーズはというと、婚約者がいる身で他の女性と二人旅行に出かけていたが――その最中に馬車の事故に巻き込まれたことで女性との関係が発覚してしまい、婚約破棄されてしまった。
さらに、それによって社会的な評判も地に落ち、街を歩くだけでもひそひそ話をされるような状況になってしまって。段々他者を恐れるようになり、不眠症にもなり、いつしか外を一人で歩けないようになっていった。
そうしてルイーズは社会から消えていった。
その後、世は異常気象に見舞われ、世界も滅んだ。
◆
私は死んだ。
あの大嫌いな世界に別れを告げたのだ。
けれど次に生まれた時は不幸にはならなかった。
生まれ変わった先では幸福を手に入れられたのだ。
温かな家庭に生まれ、愛されて育ち、愛してくれる人と結婚することもできた。
◆終わり◆




