かつて引き離された幼馴染みにまた巡り会えました。婚約破棄されていて良かったです。
私にはかつて幼馴染みがいた。
年齢は一緒。
家が近くていつも遊んでいる関係だった。
異性ではあったけれど、幼い私たちにそんなことはまったく関係なくて、二人は純粋に仲良しだった。
でも、私に婚約者ができたことで、彼との関係は切れてしまった。
その頃は毎日泣いていた。
彼と遊びたくて。
でももう叶わない願いになっていて手遅れだった。
――それから長く時が経ち。
「お前みたいなやつ、どうでもいいんだよ。ただ、正直もう関わりたくねぇ。てことで、婚約は破棄とすることにしたから」
婚約者リフレインは不愉快そうな顔つきでそんなことを告げてきた。
「婚約、破棄……?」
「そうだ」
「そんな、急過ぎませんか」
「知るか。ここまで我慢してやっただけましだろ。うるさい女は嫌いだ」
彼は私を真っ直ぐ見ることすらしない。
「消えろよ、クソ女」
こうして嫌われたうえ婚約破棄された私だったが――その数日後に再会することとなる、ずっと想っていたあの人に。
「え! 久しぶり!?」
「あ……」
「昔よく遊んでなかったっけ!?」
「……生きていたのね」
そう、幼馴染みだ。
あの時は離れるしかなかった。
でも本当は一緒にいたかったのだ。
もっと遊んでいたかった。
「生きて、って、何それ!? 生きてるよ、ふつーに暮らしてたよ!?」
「良かった……また会えて」
彼はあの頃と変わらない。
大きくはなっても。
その瞳の綺麗さは同じ。
「大丈夫?」
「私、婚約破棄されたの。だから自由なの」
「婚約破棄!? 嘘でしょ」
「本当。貴方はもう結婚しているのよね?」
「してない」
「どうして!?」
「どうして、って……そりゃまぁ、仕事が忙しくて……」
私は想いを伝えることにした。
「貴方のことがずっと気になっていたの――できれば、だけど、一緒に生きてくれない?」
彼は顔を真っ赤にして建物の陰に隠れてしまった。
けれど。
「……もちろん」
小さくそう答えた。
幼馴染みと結ばれた私は、結婚から数年が経った今も、穏やかに暮らせている。
ちなみにリフレインはというと。あの後結婚詐欺に引っかかってしまったそうで。お金を失ったうえ心を病んでしまったそうだ。そして、女性を信じられなくなり、家から出るのも嫌になり。今では実家の自室から一歩も出られないような状態だそうだ。もちろん、結婚なんて無理である。
◆終わり◆




