婚約破棄された翌日、彼はこの世から旅立つこととなってしまったようです。
「リベリオン王子が呼んでいたわよ」
侍女に言われ、私は彼のもとへ急いだ。
リベリオン王子。
彼はこの国の王の一人息子でただ一人の王子だ。
そして私の婚約者でもある。
「来たか」
「はい」
「実は、伝えたいことがあってな」
「何でしょうか?」
リベリオンは暫し瞼を閉じてから再び目を開いて発する。
「お前との婚約、破棄とする」
彼は落ち着いていた。
瞳は私を真っ直ぐに捉えている。
「婚約、破棄……」
「そうだ」
「私は何かやらかしたのでしょうか?」
「違う。だが気が変わったのだ。もうお前とやっていく気はなくなった」
部屋には私と彼の声しかない。
「そう……ですか、分かりました」
「いいな?」
「……はい」
「ではとっとと城から出ていってくれ。もう二度と会いたくない」
悲しかった。
二度と会いたくない、という言葉が。
そこまで私が嫌なの?
考えてしまう。
深みにはまる。
考えれば考えるほどに痛みと辛さは膨らむ。
「承知しました」
その日私は城を出た。
そうするしかなかったからだ。
◆
翌朝、少し遅めに実家で目を覚ました私は、青い顔をした母から王子リベリオンの死を聞かされた。
「朝方彼の部屋に不審者が入ったんですって。それで殺されたそうよ」
「そんな……」
「詳しいことは分からないけれど」
「亡くなったの……?」
「そうみたい。もう国民向けに発表されているわ」
リベリオンは逝ってしまった。
でも私は生き残った。
そういう意味では私は幸運な女だったのかもしれない。
ならばこの幸運を捨ててはならない――。
こうして新しい一日が始まる。
◆
あれから数年、私は隣国の力ある領主と結婚し、富と幸せを掴んだ。
今は穏やかに生活できている。
毎日がとても楽しい。
リベリオンは消えても、私の人生は華に満ちている。
◆終わり◆




