昔は優しい母親だったのですが、別人のようになってしまいました。~もう貴女の発散には付き合いません~
幼い頃は優しい母親だった。
でも私がある程度年を重ねるとそうではなくなってしまった。
彼女は私をことあるごとに否定し批判し、人ではないように扱った。
多分、娘である私が女性になり始めたことが気に食わなかったのだろう。
ことあるごとにいちゃもんのような言葉を投げつけ、容姿を批判し、馬鹿にするような言葉を父や他人がいないところでだけ繰り返して。
私を傷つけること、それが、母親にとってのすべてのようだった。
憐れな人だ。
娘を傷つけようとすることでしか幸せを感じられないのだから。
そんな母親は、私の一度目の婚約も、勝手に破棄に持ち込んだ。
彼女は私の婚約者であった男性に私の悪いところを言い聞かせた。
もちろん嘘も多い。
彼女は自分の心を満たすために私の悪いところを彼に話し続け、徐々に彼を洗脳したのである。
その結果私は彼から婚約破棄を言いわたされた。
悪いことは何もしていないにもかかわらず。
婚約破棄となったその日、私は心を決めた。
家から出て生きてゆこう――そう決心したのである。
そうして私は家から出た。
行くあてはなかった。
でもそれでもあのまま虐められ続けるよりかは良いと思ったのだ。
◆
あれから六年、私は今、素晴らしい人と巡り会えたため素晴らしい人と家庭を築くことができている。
彼との出会いは家を出てすぐ。
職場の近くの店で知り合って。
私たちはあっという間に親しくなった。
「もう六年、か」
「そうね」
「長いような短いような……不思議な感じだな」
「ええ」
私も今や二児の母。
毎日賑やかさの中で生きている。
当然大変なこともある。
でも良いこともある。
子どもの成長を見守れる、それは特に良いことだ。
少なくとも――あのまま家にいて母親からあれこれ言われ虐められ続けているよりかは良かっただろうな、とは、迷いなく思えている。
私は自由だ。
苦労はあっても不幸ではない。
「いつもさ、子どもの世話とかしてくれて、ありがとな」
「そんなの……あなたが稼いでくれるからこその今よ」
「照れるわそんなこと言われたら……でも、さ、はは、嬉しいよ」
そういえば。
母親はあの後当たり散らせる人がいなくなったために夫に当たり散らすようになったそうだ。
で、夫から見放され、離婚となって。
年を重ねてから離婚となり一人になってしまった母親は周囲の人たちからくすくす笑われたり色々言われたりしたことでさらに怒りっぽくなってしまい、ある時近所の人に感情的になって襲いかかったことで治安維持組織に捕まったそう。
そして今は牢屋に入れられているらしい。
そこでもよく問題を起こしているようだが……自分勝手なことを言って周りに攻撃した罰として鞭打ち百五回の刑に処されてからは少しは大人しくなったようだ。
なんて憐れな人生の後半だろうか。
ま、自業自得なのだけれど。
◆終わり◆




