婚約者は「同性の知り合いと遊んでくる」と言っていましたが嘘でした。~残念ですがお別れです~
私と彼リオンは婚約者同士。
同棲しているに近いような状態だ。
「悪いな、明後日ちょっと仕事場の知り合いと遊んでくるわ」
リオンはいきないそんなことを言ってきた。
彼がそんなことを前もって言うのは珍しい。
大体は勝手に出掛けている。
珍しいことがあると「何か裏があるのだろうか?」などとついつい考えてしまうが……。
でも、まぁ、リオンはまともだからおかしなことはしないだろう。
「遊ぶ?」
「ああ、同性の知り合いでさ。ちょっと出掛けようって誘われたんだ」
「分かったわ、楽しんできて」
「ありがとう!」
「またお話聞かせてちょうだいね」
「あ、ああ、うん。もちろん」
◆
リオンが遊びに行くと言っていた日、私は、一人で街へ出掛けることにした。なぜならその日は暇だったからだ。リオンはいないし、しなくてはならないことも特にないし、ということで、特にすることもなく。それで、せっかくなので出掛けてみよう、と思ったのだ。
だがそこで見てしまった――。
「え……」
路地裏で口づけるリオンと一人の女性を。
「り、リオン……?」
思わず声をかけてしまう。
「なっ、なぜっ!?」
青ざめるリオン。
「う、疑っていたのか……!? まさか……!?」
リオンは女性と一歩離れる。
唇はもう重なっていない。
彼の面は真っ青、まるで血が通っていないかのよう。
「いいえ、ただ出掛けていただけよ。買い物しに来ただけ。でも、どうしてそんなことを。……残念だわ、とても」
冷静に話すけれど、相手は冷静さを欠いていた。
「疑っていたんだろう!? さてはつけてきたな!?」
「違うわ」
「嘘つき! そうだろう! 絶対!」
「違うってば」
「嘘をつくな!」
「待って、嘘つきはそちらじゃないの」
「はぁ!? 責めるのか!?」
いやいや、それはさすがに、責められても仕方がないだろう……。
こっそり女性と出掛けていちゃついているなんて……。
「ごめんなさい、ちょっと、貴方みたいな人って無理」
その後私はこのことを親に話した。
そして婚約破棄の手続きをして。
彼との関係は終わりとすることを選んだ。
それから数週間が経ち、リオンが命を絶ったことを知った。
婚約破棄された理由が周囲に知れ渡っていたために彼は毎日のように皆からひそひそ話をされるようになってしまい、それが辛くて、ある日の晩衝動的に死を選んでしまったのだそうだ。
可哀想だろうか?
いや、そうは思わない。
そもそもやらかしたのは彼だ。
やらかしていなければこんなことにはならなかった。
すべて彼の行いが招いたことである。
◆
あれから数年、私は無事結婚し家庭を得ることができた。
リオンなんてもうどうでもいい――そう思えるくらい、今は毎日が楽しくて充実している。
ちなみに最近のブームはケーキ切り。
というのも、少し前に夫の兄の奥さんが教えてくれたのだ。
彼女から教わって以来それが楽しくて。
ついつい毎日取り組んでしまう。
◆終わり◆




