婚約破棄されましたがある店の店主と仲良くなり結ばれました。~私を捨てた彼はあの後盛大にやらかしたようです~
「お前ってぱっとしないよな」
その日、私は、婚約者リンデレの家近くにいた。
彼に呼ばれて庭でお茶をしていたのだ。
今は過ごしやすい気候の時期なのでそとでこうしてお茶を飲むのもなかなか悪くはないというものだ。
ただ、リンデレの口から出たのは心ない言葉だったけれど。
「え……」
すぐには文章を返せない。
いきなりのことにそこまで頭が回らないのだ。
「だってそうだろ? 顔は並だし、知能もまあまあ、家柄もまあまあ、だろ?」
「酷いわね急に」
褒めてくれとは言わないが……並とか、まあまあとか、少し酷い。
最悪と言われるよりかはましなのかもしれないが。
でも良く言われていないことは確かで。
彼が発する言葉は明らかに私を下げている。
「事実だろ!」
「そうかもしれないけど……そんなこと言わないでちょうだい」
「事実を言って何が悪い!」
「……どうしてそんなに怒るの?」
「お前が俺に逆らったからだよ!」
もはや、何がなんだか……。
「ということで、お前との婚約は破棄とするから!」
「え」
「婚約破棄!」
「ええっ!?」
「そういうことだ」
「そんな……」
すると彼は勝ち誇ったように笑った。
「せいぜい後悔するんだな! ははは! ははははは!」
こうして私とリンデレの婚約は消え去ってしまった。
これまで築いてきたものはあっという間に壊れた。
悲しいことだ、急に壊れてしまうなんて。
でも仕方ない。
彼が望んだことだから。
私はただそれに従っただけだ。
◆
その後私はしばらく実家で暮らした。
親はそれを許してくれて。
おかげで気まずい思いはせずに済んだ。
そんな実家暮らしの最中、家からそう離れていない場所に東国の文化を取り入れたグッズショップが開かれた。
ふと思い立って一度行ってみたのだが。
そこの店主と気が合って、仲良くなり、それにより定期的に店へ通うようになった。
そうして、やがて、その店主と結婚することとなる。
年齢が近かったのは幸運だったと言えるかもしれない。
年が離れていたら結婚なんて無理だっただろう。
彼とは出身国は異なるが、それでも、上手くやっていこうと思っている。
こうして私は幸せを掴めた。
その一方、リンデレはというと、結婚しながら他の女と遊んでいたというやらかしであらゆるものを失ったようだ。
彼は、一人の女性と結婚したにもかかわらず、複数の女性と関わりを持っていたらしい。しかも、ちょっとした関わりではなく、かなり深い関わりにまで発展していたそうで。ただ、ある時、女性と愛を囁き合っているところを妻に目撃され。激怒され、お金をもぎ取られて離婚され、さらにはそのやらかしを広く世にしらされてしまったそうだ。それによって彼は多くのものを失ったらしい、たとえば……周囲から世からの評判とか、社会的な立ち位置とか。
で、彼は今、物置だった山小屋で一人暮らしているらしい。
やらかしの一件以来彼は人の目が怖くなってしまったらしく、人がいるところへは出られない状態だそうで。そのため実家には住めず、古ぼけた山小屋に住むしかないそうだ。
◆終わり◆




