不細工と言って婚約破棄した貴方は同じ悲しみを味わえば良いのです。
「お前、不細工だよなほーんと」
婚約者レーゼンが酷い言葉を告げてきた。
なぜそんなことを言うの?
そう思い、もやもやしていると。
「よって、婚約は破棄とする」
彼はそのような言葉を並べた。
「え……」
「いいな?」
よそで不細工と言われたことはないのだが。
確かに絶世の美女ではないだろうけれど。
「待って、どういうこと」
「だから婚約破棄だよ」
「……不細工だから?」
「ああそうだ、そういうことだ。だってお前、不細工だろ? お前みたいなやつ生きてる価値ないし、それに、お前みたいなやつに子ができたらその子が気の毒だろうが」
こうしてレーゼンとの関係は急に終わってしまった。
◆
それからしばらく悲しみの中にあった私の前に現れたのは、一人の魔女だった。
「あなたを美女にしてあげるわ」
「え」
「どう? いいでしょ?」
「は、はい」
こうして私は美女になった。
魔女の魔法によって。
鏡を見た瞬間驚いたくらいの美しい顔立ちになっていた。
「その姿で彼に近づきなさい――そして絶望させてあげるのよ」
◆
その後私は美女となって彼のもとへ舞い戻った。
彼はすぐに私を気に入った。
ことあるごとにこの容姿を褒めてくれた。
美しくなった私の前ではレーゼンはいつもデレデレしている。
目の前の女がかつて切り捨てた私だなんて気づいていない。
鼻の下を伸ばしているレーゼンは面白い。
この顔がいずれ絶望に染まると思ったら楽しみで仕方ない。
そして。
「あの……婚約、して……くれないか?」
「はい?」
「えっ……」
「貴方みたいな不細工な人と婚約だなんて嫌だわ」
瞬間、レーゼンの顔は絶望に染まった。
私はきっと悪なのだろう。
負の連鎖を繰り返して。
でも――それでも構わない。
◆
あれから数年、私は穏やかな結婚をすることができた。
今は幸せに暮らしている。
ちなみにレーゼンはというと、あの後絶望で体調を崩してしまい、今も実家で親に世話をしてもらいながら生きているような状態だそうだ。
◆終わり◆




