小型魔獣の飼育が仕事の親のもとに生まれた私は、婚約者に獣臭いと言われ婚約破棄されてしまいました。
私の親は小型魔獣を飼育する仕事をしていた。
それゆえ私は幼い頃から魔獣と一緒にいて。
一日の中の多くの時間を小さくて元気で可愛い魔獣たちと一緒に過ごしていた。
そして、気づけば世話もするようになっていて。
時に一緒に遊び。
時に世話をして。
そんな風にして育ってきた。
でもそのことを悪く言われたことはなく。むしろ褒められていたくらいだった。学校時代だって皆から「凄い」とか「楽しそう」とか言われたくらいのもので、悪いことや否定するようなことを言われたことはなかった。
しかし遂にその時が来てしまった。
「お前みたいな獣臭い女、やっぱ無理だ! 我慢にも限界がある! だから婚約は破棄する!」
婚約者である彼オブリオは私が小型魔獣と関わりを持っていることを良く思っていなかったようで――そんなある日、突然、婚約破棄を告げられてしまったのだ。
「獣臭いやつは獣と結婚でもしろよな! ばーかばーか。くっせーお前は人間じゃねーんだよ! あーはははは、くそうけー。くっせーやつはくっせーやつと一緒にいればいいんだよ!」
なぜそんなことを言うの。
それも平然と。
言われた人の気持ちを考えてはみないのだろうか?
とはいえ、ここまで言われてしまっては、私ももう彼を婚約者とは思えない。
ならば別れるしかないというもの。
彼とは終わりだ。
ここで道は途絶えた。
「そう……貴方の気持ちは分かったわ。じゃ、これで。私たち終わりね――さよなら、永遠に」
その翌日、オブリオの家がある村は突如大量発生した小型魔獣の群れに襲われ壊滅した。
多くの人が亡くなり。
多くの家や物が破壊され。
そして、オブリオもまた、その事件によって命を落とした。
「走っちゃだめー! じっとして! もー、駄目でしょ、じっとしてて!」
婚約が破棄となった翌日に彼が死亡するなんて、正直、まったくもって想定していなかった。それに、魔獣の大量発生なんて、そんなことが起こるなんて思っていなかった。これまでそんなことはなかったし。でも実際にそういうことが起きて、彼は命を落としたのだ。
驚くようなこともあるものだなぁ……。
「こっちにいてねー、あ! 駄目! そっちは駄目! あー、よしよし、いいよ偉いよー。こっちに集まってー」
ちなみに私はというと、小型魔獣の世話をして生きている。
ただし婚約も決まっている。
相手は魔獣の研究者。
彼とならきっと上手くやってゆけるだろう。
◆終わり◆




