婚約破棄された令嬢は精霊の世話係として生きることにしました、が……!?
「リリーフ・エレガート! お前との婚約、本日をもって破棄とする!」
その日、私は、王子エレダに婚約破棄を宣言された。
何かやらかした?
迷惑をかけていた?
束の間、色々考えたのだけれど――どうやらそういう意味ではなかったようで。
「俺にはもっと妻としたい人ができたのだ! よってお前との関係は終わりとする! これは俺の決意! 決して変えようとは思わない! ……だからお前が何を言おうとも関係ない。我が心は絶対に変わらないのだ!」
雨降りの日、私は王子に捨てられた。
どうして……。
理不尽過ぎる……。
心がとても痛くて、雨粒にまぎれて涙がこぼれた。
だが、その直後、私のもとへ一体の精霊がやって来た。
王精霊と呼ばれる精霊の手下だと話す精霊だ。
彼は「王精霊のところへ来て世話係をしてほしい」と頼まれて――何をするでもなかった私はそれを受け入れた。
手下の精霊が喜んでくれたのは嬉しかった。
こうして私は精霊の国へ行く。
「お連れしました! 世話係に相応しそうな女性です!」
「おお、見つかったか」
「こちらの女性です! 美しいでしょう? 人間の王子に婚約破棄されたばかりの女性だったので簡単に一緒に来てくださいました!」
「……お主、それは少々失礼だろう」
「え!? 変でしょうか!?」
「言って良いことと駄目なことがあるのだぞ、お主」
私は王精霊の世話係となった。
先輩に習いながら仕事をこなす。
そんな日々はこれまでには経験がないもので。
毎日良い意味で刺激があって楽しかった。
そうして働いていたある日のこと、私は、王精霊から妻となることを望まれた。
その時はつい「ええええええええ!?」と叫んでしまった。
でも私は受け入れることにした。
渋くても悪ではない王精霊のことが嫌いではなかったから。
こうして王精霊の妻となった私とは対照的に、王子エレダはあれから一年も経たないうちに死亡してしまったようだ。
というのも、私が去った直後あの国の中で革命のようなことが起きたそうで、その騒乱の中で婚約者の女性もろとも捕まってしまった彼はそのまま処刑されてしまったそうなのだ。
死後は都の中央部にある国民広場に晒されていたというから――人の恨みや念とは恐ろしいものだ、と思ってしまう。
◆終わり◆




