婚約破棄したうえ殺めようとした彼は自滅しました。~ま、完全に自業自得ですよね~
その日、私は、婚約者オズレッドに呼び出された。
しかし不自然な点もあって。
呼び出された場所が近所の崖辺りだったのだ。
何だろう?
場所指定があるなんて珍しいな。
――そんなことを思っていたのだが。
「悪いな急に」
「いえ」
「で、話なんだが」
「ええ」
崖を眺める会、というわけではないようだった。
でもだとしたら何の意味があるのだろう?
ここを選ぶ理由が何かあったのだろうか?
「お前との、婚約なんだが破棄することにした」
「え――」
「はっきりと言う。お前と生きていくことが怖くなったんだ。これまで我慢しようと思ってきたが、やはり、お前を生涯の相棒とするのは無理だ。だからこう決めてこう告げることにした」
婚約破棄? どうしてそんなことを言われているの? 私は何かやらかしてしまっていた? いや、でも、心当たりはまったくない。それに、彼は中途半端な説明しかしていない。具体的な理由は何も聞かされていないのだ。ということは? もしかしたら、理由なんてないのか? ただの気分とか?
ならこの場所を選んだのもただの気分……?
――刹那、オズレッドは私の腹あたりを強く突き飛ばした。
「あ……っ、ととととと、ふぅ」
よろけたが取り敢えず転倒せずに済んだ。
危うく崖から転落するところだった。
安堵していた、瞬間、突き飛ばした勢いを抑えきれずオズレッドは飛んでいってしまう――そして崖の方へ進み、落ちていってしまった。
「オズレッド……そんな……」
オズレッドは崖から落ちて死亡した。
◆
あれから一年半、私はイウェンという茶髪の男性と結婚した。
彼は元旅芸人。
しかし今はこの国にとどまっている。
彼は今はもう旅をしようとは思っていないようで、職にもついている。
「君みたいな人と生きていけるなら嬉しいよ!」
結婚する日、イウェンがそう言ってくれたことを、今もとても嬉しく思っている。
私はイウェンと生きてゆく。
これからもずっと。
仲良く、楽しく、一緒に歩んでいく。
たとえ何があったとしても――きっと乗り越えてゆけるだろう。
◆終わり◆




