婚約破棄され壊れた私がいつの間にか英雄になった話……です。
「君との婚約は破棄する」
その日告げられた言葉。
「僕はこれから彼女と生きてゆくんだ。だからもう君は要らないしいてもらっちゃ邪魔なんだよ」
それは、それらは、私を切り刻んでいく。
「それにさ、彼女も君の存在が嫌って言ってる。だから僕はもう遠慮はしない、君を躊躇なく切り捨てる。ま、自分から辞退しない君が悪いよね? はは。ということで、さよなら」
彼と隣の女性は私の目の前で口づける。
そしてこちらを見て笑みを浮かべるのだ。
今まさに触れ合っていた唇に。
こうして私の心は滅んだ――。
もう戻らない。
幸福な日々は。
あまりの絶望、それゆえ、涙さえ出せず。
絶望の海の底――そこにまで至った時、人は――人を超越する。
◆
その後私は兵士となった。
剣を手に携えて。
すべてを壊し滅ぼし続ける存在となった。
人々は私を恐れた。
悪魔、と。
それでも私は戦った。
それを望んでいたのだ。
◆
気づけば世界を救ってしまった。
なぜだ?
壊し続けただけなのに。
でも、私は今、『国護りの戦乙女』として皆から称賛されている。
――これは、婚約破棄され壊れた私がいつの間にか英雄になった話である。
◆終わり◆




