愛し合っている、ですか。分かりました、婚約破棄は受け入れましょう。ただし……何があっても後悔しないでくださいね?
「俺たち、愛し合ってるんだ!」
満面の笑みでそう言うのは私の婚約者オルガ。
「あたしたち、誰よりも愛し合っているのよぉ!」
そう続けたのはオルガの横になぜか立っている金髪ロングの女性。
「だからサラ、お前との婚約は破棄とする! ゾ!」
「え……」
「俺、彼女と幸せになるんだ! もう決めたんだゾ!」
金髪ロングの女性は「オルガの口調かぁわ~い~い~」と空気を読まず口を挟んでくる。
「オルガったらぁ、喋り方あまあま過ぎぃ、かわいすぎぃ~」
「言うなよ! 酷いゾ!」
「それそれ、それが可愛いのよぉ」
「恥ずかしい! ゾ!」
「んもぉ、面白ぉ~い。いっつもぉ~」
それから二人は腕と腕を絡めた。
互いに胸もとを引っ付けて。
瞳と瞳で愛し合うように面を互いに向ける。
……何を見せられているのだろう?
オルガの正当な婚約者は私だ。なのに今私はよそもののように悲しいくらい雑に扱われている。しかも婚約者が他の女性といちゃつくところを至近距離で見せられて。
不快としか言い様がない。
「ま、そういうことだから、サラは去ってくれよな」
「そうですか……分かりました」
「よろしく!」
「はい。ですが……どうなったとしても、後悔しないでくださいね」
それだけ言って去った。
予告は済んだ。
彼らが今からどうなるか楽しみだ。
◆
翌日、実家でのんびりしていた私は、オルガと仲良かったあの金髪ロング女性が死んだということを父親から聞いた。
私の父親が送り込んだ一人の男性。
女性は彼によって殺められた。
男性は女性を「金を払うから」と言って宿泊所に呼び出すと、そこで静かに仕留めたようだ。
あんなに元気だった彼女も呆気なくこの世から消えたのだ。
で、その数日後、今度はオルガが謎の死を遂げた。
彼はその日の夕食後急に大声で歌って踊り出したらしく。両親が不思議に思って見ていたところ、急に走って家から出ていったそうだ。で、親は彼を探すが、見つけられなかった。そして、その次の日の朝、亡骸となった彼の身体が家の前に置かれていたそうだ。死因は謎のままだそうだが、身体の一部には獣に食べられたような跡があったという話だけは聞けた。
オルガの死は一体どういう死だったのだろう……。
謎は謎のまま闇へ消える。
◆
あれから数年、私は今、結婚し子も産んで二児の母となっている。
私は日々育児に燃えている。
とにかく大変で忙しい。
けれども徐々に育ちゆく子を見守っているのはとても楽しい。
◆終わり◆




