その日私は婚約破棄を告げられてしまいました。しかし望む道へ進むことができました。
愛していた花が枯れた日、私は婚約者リボンから告げられた。
「お前との婚約、本日をもって破棄とする!」
そんなことを。
驚くことはいきなりやって来る。
そういうものと聞いたことはあったけれど。
その話はやはり事実だったようだ。
「え、婚約破棄!? ……どうして」
「お前みたいな花を愛する女とは仲良くしていきたくない、そう思ってな」
「花!? それがそんなに駄目だったの!?」
「ああ。だっておかしいだろう? いい年した女が花を心の底から愛でるなんて」
子どもだけしか花を愛でなくてはならないの?
大人が愛でるのはおかしいこと?
正直、彼の言うことは分からない。
そもそも、何を愛するかなんて自由ではないか。
迷惑をかけているならとにかく。
誰にも迷惑をかけていなくて犯罪でもないのなら好きにさせてほしい。
「どうしてそんなことで婚約破棄なんてするの?」
「おかしな女を妻になんかしたくないんだよ」
「おかしいとは思わないわ。私はただ花が好きなだけよ。それに、そんな人はどこにだっているでしょう?」
するとリボンは急に頬を膨らませて「おかしいんだ! ママがそう言ってたもん!」と子どものように言い返してきた。
これはもう無理なやつ――そう思い、私は彼の前から去ることにした。
彼は私に目を向ける気はないのだろう。
ならば私は流す。
彼とはもう付き合っていかない。
ここまでにしよう。
◆
その後私は実家へ戻って花を育て始めた。
親は許可してくれ、庭やら何やらを自由に使わせてくれた。
おかげでのびのびと花の世話ができた。
◆
あれから五年。
私は今、この国で初となる高級路線の花屋を開き、花のお世話と商売に打ち込んでいる。
もちろん苦労もあることはあるけれど――それでも、この道は私が選んだ道、だからどんなことがあっても受け入れようと思っている。
商売はそこそこ波に乗ってきていて、徐々に楽しくなってきているところだ。
これが私の人生。
今はそう強く思えている。
私は私の道を行く。
そうそう、そういえば。
先日親から聞いたのだけれど。
リボンにはあの後恋人ができたそうなのだが、その恋人を振った次の日に、元恋人となったその女性から『お別れの品』として貰ったクッキーを食べて即死したそうだ。
何でも、そのクッキーには、ある植物の毒が入っていたらしい。
◆終わり◆




