表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

641/1194

婚約者イコール奴隷と思っているようですが、それは間違いですよ。

「お前みたいなごみ女に人権はない! お前はどこまでもくず、どこまでもごみ、なんだ! だからはっきり言わせてもらう――お前との婚約、本日をもって破棄とする!!」


 婚約者ガメル。

 がっちりしていそうな名ではあるが実際にはほっそりした男性だ。


「どうして、そのようなことを言い出すのですか」

「俺の女性関係にあれこれ言うとは生意気な! ごみ女のくせに!」

「暴言を吐かないでください」

「ふざけるな、そのようなことを言って、許さんぞ! お前は俺と婚約したのだろう、ならば俺の奴隷なのだ! 奴隷が主に逆らうなど意見を言うなど! あり得ないことだ!」


 婚約はしたけれど。

 奴隷になるとは言っていない。


 彼は大きな勘違いをしている。


「私は奴隷ではありません」

「そういうところがくそなんだ!」

「くそとか言わないでくださいよ」

「うるさい! 黙れ! 婚約破棄したのだから、黙って、受け入れろ! 大人しく去れ、早く! 今すぐ! 一秒以内に!!」


 ガメルは歯茎を剥き出しにして怒鳴る。


 呆れた――。


 もう付き合えない。

 やっていられない。


 なので私は去ることにした。


 だってそうだろう? いくら将来の夫婦なのだとしても、奴隷扱いなんてされたくないものだ。それに、彼の理論はよく分からない。婚約したならば奴隷? 呆れた主張だ。そんな話は聞いたことがないし、私もそんなつもりで婚約したわけではないのだ。いや、むしろ、そんな考えで婚約を決める者の方が稀だろう。



 ◆



 ガメルとの婚約が消えてから、私は、毎日のように舞踏会に通った。


 会の規模は様々。それでもほぼすべてに参加した。参加許可条件から外れてしまっていない限り――どんな小規模な会にでも参加していた。


 その結果、おっとりしていて柔らかい雰囲気の男性に出会え、彼と上手くいって結婚するところにまで至ることができた。


 夫となっても彼の柔らかさと優しさは変わらず。

 猫かぶりではなかったようだ。

 本当に彼はそういう人だったのだ、仮面ではなかった。


 ただ、少々おっとりし過ぎているところもあって、たまに不安にはなるのだが……。


 でも、そういうところも含めて、彼だ。


 だからそれでいい。完璧なんて望まない。そもそも完璧なんて人には難しいのだから。それに、ちょっとした隙も時にはその人の魅力にもなるもの。一見残念そうなところも含めてその人なのだからそれでいい。


 ちなみにガメルはというと、あの婚約破棄の数日後に父親の仕事が大失敗し、それによって家のお金もほぼなくなってしまったらしい。そして、息子であるガメルは、奴隷用人間として、親によって勝手に売り飛ばされたそうだ。


 彼は今、きっと、この世のどこかで奴隷として生きているのだろう。



◆終わり◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ