かつて婚約者を妹のせいで失いました。~妹は今回も邪魔する気のようですが、もう邪魔はさせません~
かつて私は婚約者との関係を妹に壊された。
年頃になった頃にできた婚約者とはとても仲が良かったのだが、妹リリネが嘘を器用に使って私をはめたことで、彼との関わりは終わることとなってしまった。
「君がそんな人だとは思わなかった。がっかりだよ。ということで、婚約は破棄するから。いいね? じゃ、そういうことで。さよなら、永遠に」
仲良しだった婚約者にそう告げられ切り捨てられたその時の絶望。
それは今でも覚えている。
時が経ってもなお――その瞬間の、雷のような衝撃とそれから襲いかかってくる絶望悲しみは消えることはない。
◆
そして今、私には婚約者がいる。
前に終わった彼とは違う。
今の相手は王子だ。
ある時彼が怪我しているところを助けたことから知り合い婚約するに至ったのである。
で、案の定、今回も妹リリネが手を出してきた。
彼女はこっそり王子に近づいて私の悪いことを次々に話す。内緒、と、嘘つきである自分にとって都合の良いことを言いながら。前と似たような手口だ。
だが王子は騙されなかった。
前に私が、妹によって婚約破棄に至らされたという話をしていたのが、参考となって良かったのかもしれない。
王子はリリネに「もう近づかないでくれ」と伝える。
が、彼女は簡単には離れず諦めず。
さらに嘘を重ねたことを吹き込もうとする。
その結果――リリネは終身奴隷刑となった。
彼女はもう自由には戻れない。
人として生きてゆくことはできない。
彼女の人権ははく奪されたのだ。
死刑ではないため殺されはしないが、死ぬまで奴隷のようにこき使われる。動ける限り働かされるのだ。もちろん、好きなことをする時間はほとんど与えられず、食事も低質で睡眠環境も最悪。そういう意味では、死刑よりもたちの悪い刑と言えるかもしれない。
リリネはもう人には戻れないのだ。
こうして、ことあるごとに邪魔をしてくる彼女が消えたので、私は穏やかに王子との未来を得ることができた。
もう誰にも邪魔はさせない。
この道を塞がせはしない。
幸せに生きてゆくのだ。
◆終わり◆




