嫌いなおばさんがざまぁされました。
隣の隣の家に住んでいる夫婦、その妻の方、彼女は五十代くらいのおばさんなのだが勘違いが凄い。夫が大人しい人だということもあってか、彼女はこの世のほとんどのものが思い通りになるのを普通だと思い込んでいるのだ。もっとも、家庭内でなら自由にしてもらえば良い。ただ、彼女の場合、家の外にまでそれを持ち込むから鬱陶しいし厄介なのだ。
すれ違いざまに「あんた頭大丈夫? いっつもだっさいよね~。もっとおしゃれしなさいよ~」と言われた時には純粋に意味が分からなかった。
ゴミを集めている時には「あんた、ゴミ集めにぴったりね~。もともとゴミの匂いするし~」とわざわざ大声で。
広場で遊ぶ子どもを見ていたら「うるさいんだっての! ちょっと、あんたも注意しなさいよ!」と急に背後から怒鳴られた。
彼女はどうかしていると思う……。
しかも彼女、もう数年にわたって不倫している。
夫がいない時間には隠そうともせず男と一緒にいたり喋っていたりする。
彼女の不倫は皆知っている。
もし仮に知っていない人がいるとしたら夫くらいだろうか。
この前は、男を家に連れ込んでいるところも見た。
◆
「どうしてそんなことを言われなくちゃなんないのよぉーっ!!」
その日、外から響いてきた大声で起きた。
驚いて窓から外を見てみる。
あのおばさんが夫と言い合いをしているようだ。
窓を僅かに開ける。
少し聞いてみようか……。
「不倫していることはずっと前から知っていたんだ」
「あんただってしてるでしょお!?」
「していないよ」
「うそよ! してる! 不倫くらい男ならするものよぉ!!」
「証拠があるの?」
「……しょ、証拠なんて!! そんなもの要らない!! 要らないのよ、だって私がそう言ったらそうなの!!」
夫の溜め息が聞こえてきた。
「だから、していないんだって」
「嘘ばっかり!」
「でも君の不倫には証拠があるよね」
「あれははめられたのよ! 罠よ! 近所のやつらがはめてきたの! 魅力的なあたしを妬んでるの!!」
聞いていて呆れる……。
「まあいい、君とは離婚する」
「はぁ!? なんのつもり!? 決定権なんてそっちにあるわけないでしょ!?」
「不倫されたから、ね」
「うっ……」
「じゃあこれで」
その後、あの女性はどこか遠いところへ引っ越していった。
あの家は夫が持っている家だったようで、離婚と同時に追い出されたようだ。
で、これは噂なのだが。
彼女はその後はいろんな町の酒場に出入りして男を捕まえては金を使わせる生活を続けているらしい。だが、年齢が年齢なので男をたくさん捕まえるのは難しく、かなりぎりぎりの生活だそうだ。
住める家は持っておらず他人頼み、服さえ一着くらいしか持てない状態だと聞いている。
◆終わり◆