婚約破棄されたレシリアは国の剣となり英雄となる。~冒険者を馬鹿にしていた彼は助けを求めるも見捨てられたようです~
「レシリア、お前みたいな野蛮なやつ、大嫌いだ――ってことで、婚約破棄する! お前みたいな冒険者とかやっていたような野蛮女は今すぐ消えてほしい、そのくらい嫌いだ。蛮族。……てことで! 今すぐ俺の前から消えてくれ!」
その日、私は、婚約者ガッチからそう言われてしまった。
私はかつて冒険者をしていた。彼が野蛮と言うのはそういうところなのだろう、恐らく。でも私はすべきことに則って戦っていただけ。冒険者として活動していただけ、それは仕事のようなものだ。人から命や物を奪ったことはないし、賊のような行為に手を出したこともない。仕事をしていただけなのだから、野蛮、などと言われる筋合いはないはずだ。
けれども、今さら何を言っても無駄だろう。
彼の心は決まっている。
私が何を言おうとも彼の心を変えることはできないのだろう。
それに、そもそもの原因である私が冒険者だったという事実は変えられないので、もはやどうしようもない。
「はよ去れや」
「……分かりました、ではこれで」
ガッチとの関係はここまで。
そう理解しよう。
◆
ガッチと離れることになった後、私は、再び冒険者として働いていくことにした。
元々はもう辞めたままでいくつもりだった。
結婚するだろうと思っていたし。
子どもがいる身で冒険者は厳しいだろうと思っていたし。
でも、婚約が破棄となったため、すべてが変わった。
ならば私は戦いたい――そう思って、私は、元々の職に戻ることにした。
◆
冒険者復帰から一年半、私は、国内の冒険者ランキングで一位をとることに成功した。
ここに至る道のりは案外容易く。
懐かしさを感じつつ仕事に打ち込んでいたら頂にたどり着いていた。
べつに一位になりたかったというわけでもないが……。
ただ、己を行いや努力が評価されたことは、素直に嬉しかった。
◆
冒険者ランキング一位に達してから二年四ヶ月、攻めてきた隣国の軍を撃退することに貢献したために、国王から表彰を受けた。また、追加報酬として凄まじい額のお金を貰うことができて。貧しかったわけではないけれど、その追加報酬によって一気に裕福になった。
そうして私は『剣』と『英雄』と呼ばれるようになった。
今は望むものすべてが手に入る。
もし平和が得られたとしたら、恋をするのも悪くないかもしれない。
いつかは。
その気になれば、だが。
ちなみに――ガッチはというと、前々から冒険者を見下していたために敵軍に襲われた時に地域の冒険者に見捨てられてしまい助けてもらえず、その結果敵軍の兵によって殺められたそうだ。
◆終わり◆




