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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


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赤い瞳は悪魔の生まれ変わり? まさか! 違います。ただこういう目の色なだけです!

「お前のその赤い瞳、不気味としか言い様がない。母が言うには、赤い瞳を持つお前は、悪魔の生まれ変わりだそうだ。ということで! お前との婚約は破棄とする!!」


 婚約者オーライは、ある日の昼下がり、自宅にわざわざ私を呼び出してそう告げてきた。


 彼は何やら勝ち誇ったような顔。

 なぜそんな顔をしているのか謎でしかない。


「婚約破棄? 本気ですか?」

「ああ。穢れた呪われた血を我が家に入れることはできないからな」

「……何を根拠にそのようなことを」

「瞳だ! その、血のような、赤い瞳!!」

「確かに赤い目は珍しいです。が、それが悪いものだという根拠はあるのですか? あるなら、まずは、それを説明してください」


 すると彼は声を荒くし、「うるさい!」とか「出ていけ!」とか喚き、さらには私を両手で突き飛ばしてきた。


「早く出ていってくれ! 穢らわしい!」

「……失礼な人ですね」

「はぁ? 舐めるなよ! 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿! さっさと出ていけ気味悪いくそ女! 少し珍しい色の目を持っているからって調子に乗るな! 女なんかなぁ、男に下品に媚売って男の便所になってりゃいいんだよ! どうせそれしか使い道なんぞないんだから! そんな簡単なこともできねぇ赤目の化け物は消え失せろや!」


 感情的になっているオーライは失礼な言葉ばかり並べる。


 もうやっていられない。

 そう思ったので。

 私はその場から速やかに去ることにした。


 そもそも私は人間だ。奴隷でも便所でもない。女だとしても、だ。女でも人間なのだ、人間として扱われない場所に留まる気など一切ない。人間として扱われないなら死ぬのと同じこと、いや、死ぬ方がずっとずっと美しく幸せだろう。


 もうオーライとは関わらない。


 他人になろう。

 彼もそれを望んでいるのだし。



 ◆



 その後私は、その赤い目を持っていたために隣国の王子に見初められ、彼のもとへ行くことを選んだ。


 聞いた話によれば。

 隣国では、赤い瞳の持ち主は神の生まれ変わりとされ、大切にされるものらしい。


「貴方が来てくれて嬉しいよ」

「いえ……」


 生まれた国から去るというのは少々切なくもあるけれど。

 でも行く道の先に明るい未来があるなら。

 新たなる世界へと踏み出すのも悪くはないのかもしれない。


「大丈夫? 体調悪い? 元気がなさそうだけど……あっ、もしかして、僕と結婚するのが嫌だった?」

「そ、そんな! そんなこと! ありません!」

「本当?」

「はい。本当です。必要とされて嬉しかった、その気持ちに偽りはありません」

「なら良かった。……無理矢理になってしまったかと」

「声をかけてくださってありがとうございます」


 こうして私は進む。

 幸せな、光ある、未来へと。


 ちなみにオーライはというと、あの後『赤い女神』という恐ろしい存在が見えるようになってしまって眠れなくなり、ある朝急に死亡していたそうだ。しかも、夜にいたはずの自室のベッド上ではなく、自宅の便所にて亡くなっていたのだそう。彼の亡骸は便所で発見され、あたりには血液ではない赤い謎の液体が垂れていたとのこと。


 そして、息子をそのような形で失ったことでオーライの母親も精神崩壊し、一日中暴れまわるような状態になったらしく。それによって離婚という形で夫に捨てられ、実家へ戻るも親からも嫌がられ、山に捨てられたらしい。結果、そのまま飢え死にしたと見られているとのことだ。



◆終わり◆

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