何度も浮気を繰り返してきた夫がまた浮気しているようです。今回はさすがにもう許せません、こうなったら離婚です。
私には夫がいる。
夫の名はトルべス。
彼はこれまでに何度も浮気を繰り返してきた。
それも、私の家より低い家柄だった彼が私の家の力を手に入れるため私t結ばれることを望んだにもかかわらず、だ。
彼は私の家の力は欲しかったものの私は特に欲しくはなかったようで。
結婚した時点で彼の中では終わったのだろう。
夫婦となった途端、彼は私に興味を示さなくなり、しまいには裏で他の女性と楽しく遊ぶようになった。
これまで数回の浮気は、彼が謝ったため、厳重注意のみで許したことで話が終わった。
だがまたやらかしているようで。
今回はもう五回目くらいだと思う。
もうそろそろ許せない。
私は彼と離婚することを決意し、そのための浮気の証拠をこっそり集め始めた。
幸い人脈はある。
証拠を集めることを生業としている人だって知り合いにはいるのだ。
ということで、離婚に向けて動き出した。
◆
それから数ヶ月。
「トルべス、ちょっといいかしら?」
「あぁいいよ。……何?」
「話があるの」
「話? うんいいよ、今からでいいよね」
「ええ」
私は夫であるトルべスを広間へ呼び出す。
広間には、前もって、両親に待機してもらっていた。それを見たトルべスは一瞬かなり驚いたような顔をしていたけれど、すぐに笑顔を作った。
「トルべス、実はね、私――貴方と離婚することにしたの」
私ははっきり告げる。
「え!?」
「貴方、また、浮気しているでしょう」
「え? ないない! ないよそんなの!」
「それ……本気で言ってる?」
「ああそうだよ! もちろん! 僕には貴女だけさ!」
認めないなら仕方ない、と、私はこれまで集めてきた証拠品を彼の前に出した。
一つだけではない。
いくつもある。
何なら、相手女性との決定的瞬間を捉えた写真だってあるのだ。
「これでも浮気していないと言う?」
改めて問うと。
「……ごめん、その……浮気、しま、した……でも……身体だけ、です……それに、向こうがたぶらかしてきた、からです……」
トルべスはわざとらしく涙をこぼす。
「許して、くだ、さい……もうしません……」
もう謝罪は信じない。
だって彼の謝罪が本当の謝罪だったことはないから。
今ここで許しても、きっと、またやらかす。
「さようならトルべス。……離婚よ」
彼は「嫌だぁ!」と叫んで泣いていたけれど、彼とはもう一緒に生きないことにした。
だってそうだろう? きっとまた浮気されるのだ。そんな人と生涯を共にしたいなんて者がいるか? 珍しいだろう。もし仮にいたとしても、恐らくかなり稀だろう。
◆
離婚後、私は生まれ育った街で畑を始め、野菜売りの仕事を趣味がてら始めた。
家がそれなりに裕福なので儲けがそれほどなくてもやっていける。だからこそ、普通の値段より安い値段で野菜を売ることができる。そういうこともあって、野菜を安く買いたい人には人気だった。
一方トルべスはというと、浮気相手だった女性に「妻に捨てられたから結婚してほしい、君と一緒に生きたい、どうか、お願いお願い」としつこく頼み込んだ結果「そういう関係になるつもりはないから」と拒否され、一人になってしまったそうだ。
また、女性からはっきり拒否されたことで自信をなくし、女性に声をかけることが一切できなくなってしまったらしい。
ま、自業自得としか思わないけれど。
◆終わり◆




