女に薬物を使って洗脳された婚約者の王子が婚約破棄してきました。無実であると証明できれば私はそれだけで結構です、さようなら。
私は王子の婚約者だった。
けれどもある日突然知らない女性が現れて。
その女性は私を陥れようとしてきた。
はじめは私は侍女を虐めているという噂を流したが、侍女らが否定したことでその話は嘘であることが証明された。
だが、女性はさらに陥れようと考えたようで、今度は王子に直接迫っていった。そして「あの女は貴方や貴方の親を陥れて権力を奪い取ろうとしている」と主張。二人きりの時に薬物を注射されて洗脳された王子は、急激に女性の言葉を信じるようになって。いつしか彼は女性が言うことだけを信じるようになった。
そして。
「君は我が家を陥れようとしているそうだな! 許せない! よって、君との婚約は破棄とする!」
王子は急にそんなことを言ってきた。
いずれこの時が来るだろうとは思っていたけれど……まさかここまで信じ込んでいるとは思っていなかったので驚いた。
「そして、君には牢に入ってもらう! 王家に害を与える人間は牢に入れるというのが決まりなのだ! だからだ! 今すぐ牢へ入れる!」
こうして私は牢屋へ入れられることとなってしまった。
で、それから気づいたのだけれど、二人きりの時に薬物を注射されたという話は多くの者は知らなかったようだ。王家の周囲の者たちはそのことに気づいていなかったようだ。そこで私はその話を明かしてみることにした。とはいえすぐに信じてもらえるはずもなく。最初のうちは周りから馬鹿にされ、さらには「罪人が、いかれたことを言うな」とまで言われたほどで。それによって処罰されそうなくらいであった。
だが、ある時、王子が急に倒れた。
持病があるわけではなかった成人男性が倒れた。
当然騒ぎになった。
その後王子は医師に診てもらったのだが、その過程で、彼が不自然な薬品を摂取していたと思わることが判明。
意外な形で、私の主張が正しかったことが判明することとなった。
その後私は解放された。
国王主導の調査によって王子が女性から薬物を注射されていたことが証明されたそうで。王子はその薬によって洗脳されていただけであり、すべての話は女性の作り話だったと国に認められ、それによって私に罪はないということになったのであった。
解放後、私は、国から償いのための金を支払ってもらった。
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こうして自由な暮らしを手に入れた私は、一旦実家へ戻り、そこでのんびり暮らした後に幼い頃仲良くしていた青年と結婚した。
幼馴染みと夫婦になるなんて想像してはいなかったけれど、でも、これはこれで良い人生だと思えている。
夫婦には信頼が必要。
地位や金や権力だけがすべてではない。
それらだけでは幸せにはなれない。
もちろんあるに越したことはないが、それほど多くなくても、幸せになることはできるのだ。
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ちなみに、かつて私を陥れようとしたあの女性は、王子に薬物を注射していた事実が明らかになったことで牢送りとなったそうだ。彼女は「すべては王子のためだった」と頑なに主張をしていたそうだが、その主張が意味不明な内容だったため、国から無罪とされることはなく。二年間にわたる償いの強制労働をさせられた後に処刑されたそうだ。
しかし、王子はというとその時にはもはや手遅れで、ある日の晩薬欲しさに窓から飛び降りてしまって死亡したそうだ。
◆終わり◆




