婚約破棄されました、が、今は幸せです。~殺されたくないのなら殺そうとしないでください~
「君みたいなぱっとしない女性は僕には相応しくない。僕の妻となりたいならもっと麗しく忠実でなければね。ということで、君との婚約は破棄するよ」
婚約者ルリエはへらへらふざけたような笑みを撒きながらそう告げてきた。
「そういうことだから、君は消えてよね」
「あの、かなり急ですが、理由があるのですか?」
「何なのかな、それ。いいから去ってよ。鬱陶しいよ」
「気になるのです」
「うるさい!! いいから去れよ!!」
こうして、私とルリエの関係は終わった。
「ばいばい。ばっとしない女。さよなら」
一緒にいたかった。
でも無理だった。
共にあれる時間は既に過ぎ去ってしまったのだ。
その後実家へ戻った私は昔からよくしていたアクセサリー作りに打ち込むようになった。
しばらく結婚うんぬんの話はしたくない。
そんな気持ちだったから。
◆
ルリエに婚約破棄されてからちょうど一年となる日、私は、都で開催される手作りアクセサリー販売イベントに参加した。
すると私が作ったアクセサリーが人気になり。
持ってきていた商品は半日も経たず売れきった。
ここまで人気になるとは、と、驚いていた。
だがそれで終わりではなかった。
話を聞き付けた王子がやって来て、素晴らしい技術だと褒めてくれたのだ。
「今日は商品がもうあまりないとのことですね」
「はい……申し訳ありません」
「次の出展の際には必ず来ます。その時には見せてくださいね」
「は、はい」
これが王子との出会いとなり。
その後彼と何度も関わりを持つようになっていった。
で、出会ってから数ヶ月後、私は彼と生きることを決意する。
「結婚の話、受けていただけるようで安心しました」
「ありがとうございます」
「これから、改めて、よろしくお願いしますね」
「は、はい……! もちろん……!」
ただのアクセサリー作り好き女でしかなかった私は、こうして、王子の妻となった。
◆
あれから二年半、私は今も王子と共に幸せに暮らせている。
そしてアクセサリー作りも。
良い環境を与えてもらえているため順調だ。
やりたいことができるっていいなぁ……、今改めてそう思っているところだ。
ちなみに、元婚約者のルリエは、私と王子の結婚が決まった頃に反対運動という名を使って私を殺害しようとしたために処刑された。
彼の妹二人は兄の行いのせいで婚約破棄され、彼の両親は息子を抑えられなかったとして終身奴隷刑に処されたそうだ。
ルリエは最期泣いていたらしい。
死にたくない、と、何度も何度も叫んでいたそうだ。
でも自業自得。
私のことを殺そうとしたのだからそうなるのも仕方ない。
他者を殺すなら、殺される覚悟もなくては。
◆終わり◆




