婚約者の王子がよく分からないことを言いながら婚約破棄してきましたが、城から追い出された私は後に北の国の王と結ばれ幸せになれました。
婚約者であり王子でもある青年オリエスタと共に生きてゆくつもりだった――今日この日までは。
「悪いがお前とはやめにする! 婚約は破棄だ!」
今日、オリエスタからそう告げられた。
しかも二人きりなどではない。
無関係な人もいるティーパーティー会場にて。
「お、お待ちください。どうしてですか? どうしていきなり……」
「実は聞いてしまったのだ――お前が裏で俺の悪口を言っている、と」
しかも心当たりにないことを言われてしまって。
「え!?」
脳がはじけとんでしまったかのよう。
まともに働かない。
衝撃があまりに大き過ぎて。
「驚いているということは、そうだということだな?」
「まさか! あり得ません! 誰が言ったのですか、そのような嘘を」
「事実、なのだろう?」
「いいえ、絶対に、事実などではありません」
「そうか。認めないか。ま、いい。そういうことだ、婚約は破棄させてもらう。ではな、さらば」
こうして私は城から追い出された。
多分、オリエスタは、私が悪口を言っていたとか何とかの話にはそこまで興味がないのだろう。それより、婚約破棄することの方が重要なのだろう。だから、私が悪口を本当に言っていようが言っていまいがそれほど興味はなく、婚約を破棄できさえすればそれで良かったのだろうと思われる。
しかし……まさかこんなことになってしまうとは。
想像していなかった。
王子に捨てられる未来なんて。
◆
王子に婚約破棄された私は、家のため、親に言われて北の国の国王と結婚することとなった。
北の国の国王は心ない冷ややかな人だと聞いていた。
けれども実際に会ってみたらそこまででもなく。
確かに表情が薄く思える人ではあるものの、彼なりに紳士的なところもある、少し不器用だけれど優しい男性だった。
私はその人にいつしか惹かれていって。
気づけば「彼と生きられて嬉しい」と純粋に思えるようになっていた。
こうして北の国の王の妻となった私は末永く幸せに暮らせることとなったのだ――意外な形での縁でしたが、これは私にとって最高の未来だったと言えるだろう。
ちなみに、かつていた国――オリエスタらの国は、私が離れてすぐに他国に攻め込まれたそう。で、急な侵攻に対応しきれず、まともに抵抗することさえできないまま滅ぼされてしまったそうだ。
オリエスタは恋人の女性と共に帝国軍に捕らえられ、後に、オリエスタのみ処刑されたそうだ。
そして、残された女性は、裏社会に売り飛ばされ奴隷として働かされることとなってしまったらしい。
もっとも、その女性のことは知らないので、その点に関してあれこれ言う権利は私にはないのだけれど。
とにかく、今確かに分かることは、あのままオリエスタのところにいなくて良かったということだ。
もし私があのまま彼の婚約者であったなら、私も何かしらの被害を受けることとなっていただろう。
そういう意味では、私は、彼の勝手さに救われたとも言えるのかもしれない。
◆終わり◆




