氷の姫は婚約破棄される。~それでも道を行き、やがて、国を護る偉大な女王となる~
氷を生み出し操る力を持った姫オレビア。
彼女は基本的には優しい両親のもとで穏やかに生きてきた。
一国のプリンセスたる彼女は、皆から愛され、優しい人たちに囲まれていた。
だが、ただ一人、彼女を愛さない者がいて。
その一人が婚約者だった。
オレビアの婚約者であるガイ、彼だけは、オレビアのことを嫌っていた。
彼はいつも周囲に「あのおかしな力が嫌だ」とか「あの女、呪われている」とか「あんな変な力の持ち主と仲良くしたくない」とか愚痴を言っていたそうで。
そしてある日。
「オレビア姫、やはり俺にはもう無理です。なので、婚約を破棄します」
ガイはついに本人にそう告げた。
「無理、とは……どういうこと、でしょうか? わたし、何かやらかしてしまっていたでしょうか?」
「その力ですよ」
「え?」
「その力が気味悪いんです、俺は普通の女性と結ばれたい」
はっきり言われたオレビアは暫し戸惑ったような顔をしたが。
「……そう、ですよね。分かりました。わたしは貴方の意思を尊重します」
悲しそうに微笑んでそう返した。
彼女は婚約破棄を受け入れたのだ。
だが、それを知ったオレビアの父親――国王が激怒して、三日後にガイを処刑した。
それからのオレビアは「わたしと在ると相手が不幸になるので、結婚は望みません」と言うようになっていたが、後に、幼い頃から知り合いだった騎士の一人と結ばれた。
時が流れ、やがてオレビアが女王となり。
その時代。
オレビアはその特別な力で、夫は騎士として、この国を護り続けた。
その時代の人たちは、皆、口を揃えて言う。
国を治めているのがこの二人で良かった、と。
◆終わり◆




