お前みたいな地味女と生涯を共にすることなどできん! と言われ、婚約破棄されました。が、その後、私は私なりの未来をつくることができました。
「お前みたいな地味女と生涯を共にすることなどできん! よって、婚約は破棄とする!」
ある日のこと、婚約者エルトンはそんなことを宣言してきた。
彼は胸を張ってふんぞり返っている。
婚約破棄を告げただけなのに。
威張れるようなことは何もしていないのに。
婚約破棄した側は偉い、とでも思っているのだろうか。
「地味女って……私がこういう人間だということは今になって分かったことではないですよね? なぜ今になってそのようなことを理由に婚約破棄するのですか、不自然ではないですか。あるいは、他に何か理由があるのですか?」
一応尋ねてみるが。
「うるさいな」
エルトンは教えてはくれそうになかった。
質問を放っただけなのに不機嫌な顔をされてしまう。
「会話になっていません」
「はぁ? いちいちくっだらねぇこと言うなよ」
「答えてもらえませんか」
「答える? わけねぇだろ! ……もういい、さっさと出ていってくれ」
聞かれたくない、か……。
ま、仕方ないか。
教えてほしいことは多くあったけれど、教えてもらうのは無理そうなので諦めた。
◆
そうして婚約破棄されてしまった私だが、自宅の広い庭からあらゆるところで利用されている価値のある鉱物が大量に発見されたことで大金持ちになれた。
鉱物によって築いた富で、私は、親がいない子どもに食料を渡す活動を始める。
活動が有名になるにつれて食べ物を寄付してくれる人も現れて。
数年でその活動の規模は百倍以上になり、その行いを国王から直々に表彰されることにまでなった。
それから私は『奉仕の聖女』と呼ばれるようになり、多くの人々から評価され、温かな人々の中で生きていけることとなった。
そして国王の次男と結婚。
家庭も手に入れられることとなった。
一方、エルトンはというと。
彼はあの後恋人と川遊びしていた最中に濁流に見舞われ流されてしまったそう。
そのまま暫し行方不明に。
それからしばらくして、川の下流にて、亡骸が発見されたそうだ。
その話を聞いて、濁流の恐ろしさを学んだ。
水は偉大だ。
でも時に恐怖の対象でもある。
上手く付き合っていかなくては。
◆終わり◆




