珍しい髪色、自分では気に言っているんです。たとえそれによって婚約破棄されたとしても、です。ま、これのお陰で幸せになれましたが。
琥珀色の髪。
それは、この国において、珍しいもの。
私はそれを持って生まれたことを誇りに思っていた。
良いことだと思っていたのだ。
両親も褒めてくれていたから、なおさら、これが嫌われる要因になるかもしれないなんて欠片ほども思わなかった。
でも。
「君のその変な色の髪、やっぱ、耐えられないわ」
その日、婚約者である彼オドリッチからそんなことを言われてしまって。
「あまり容姿のこととか言わないようにしようと思ってたんだけどさ。もし子どもにその変な色の髪が遺伝したら嫌だし我慢できないからさ、もう、この際はっきり言わせてもらうことにしたんだ」
しかも。
「だから、婚約は破棄することにしたよ」
髪色を悪く言われるだけではなく、関係さえも断たれてしまった。
この髪がそんなに嫌なの?
色が?
関係を解消するほど嫌いなの?
聞きたいことはあった。でも聞いてみる勇気はなかった。それに、もう一方的に終わらされてしまっているから、機会もなく。結局、質問なんてできないままで、彼とは別れることとなってしまった。
だが、婚約破棄から二週間が経ったある日、国王が発表した――琥珀色の髪を持つ女性がこの国を護るとお告げがあった、と。
その一件から私の人生は大きく変わってゆくこととなる。
私はすぐに発見された。
そして、国王に呼び出される形で、城へ行くこととなった。
「貴女には、我が息子の妻となってほしい」
「え。で、ですが……息子さんにも愛する人がいらっしゃるのでは……?」
「これは息子も納得していることだ」
「そ、そうですか……」
「まずは会ってみてもらえんか?」
「はい」
「良いか?」
「はい、もちろんです」
その後話はとんとんと進み、私は王子と結婚することとなった。
こんなことになるなんて。
驚きでしかなく。
けれどもそれが運命なら受け入れようと思えるようになった。
◆
あれから五年、王子と結ばれた私は、二児の母となり今も幸せに暮らしている。
最近は、将来王妃となる女性への勉強ということで、いろんな教育を受けている。朝から晩まで予定が埋まっている日もあって、そういう日はとても忙しく自由もあまりないけれど、だからといって不幸とは思わない。美味しいものを食べられるのは嬉しいし。優しい夫がいてくれて時折差し入れをくれるのも元気が出るし。
ちなみにオドリッチはというと、実家で暮らしていたある日不機嫌な母親から人格を否定するようなことを連発されたことで激怒し、母親をその場で殴り殺してしまったそう。
で、地域の警備隊に拘束され、その後処刑されたそうだ。
◆終わり◆




