王子との結婚式の日、かつて私を言葉で傷つけて婚約破棄した元婚約者が襲ってきましたが、そんなことをしても処刑されるだけです。
「お前みたいなぱっとしない女が俺みたいな男と結ばれて幸せになりたいなら、本来、もっと血が滲むような努力をしなければならない。だがお前はそれをしないな? ということはつまり、お前には俺といる資格がないということ。なんで、婚約は破棄とする」
その日、婚約者エリオは、長文をひといきで発して私との終わりを告げた。
それだけでも驚きではあったのだが、まだそれだけなら納得はできた。
けれども彼はそれだけでは満足できなかったようで。
それからも数時間にわたって私を悪く言うことを続けた。
その後何とか解放してもらうことはできたのだけれど――正直許せない部分はあった。
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その後しばらくは実家で過ごした私だったが、軽い気持ちで参加した収穫を祝うパーティーにてこの国の王子であるルルアと出会い、意外ではあるが彼と結ばれることとなった
結ばれることになるまでにはもちろん何度も会ったり喋ったりした。
で、結果、お互い納得して結ばれる道を選ぶこととなった。
ルルアは己の望みを強制するような人物ではなかったので、私の心も聞いてくれて、その点非情にありがたかった。
そうして迎えたルルアとの結婚式の日、式典中にエリオが斧を持って会場に入ろうとしてきた。しかも彼はよく分からないが私を悪く言うような言葉を発していた。
私を殺そうとしたの?
私を傷つけようと?
だがエリオはすぐに警備隊に拘束されて。
その後牢へ入れられた。
祝いの場にて物騒な事件が起きたことを申し訳なく思っていた私に、ルルアは「君だって被害者だよ、自分を責めないで」と言って気遣ってくれて、おかげで少しは心が楽になった。
で、その後、エリオは処刑されたそうだ。
一旦は拷問刑となり数日間拷問のようなことをされてから、ルルアの意向で処刑することとなったのだそうだ。
最初から処刑が決まっていればもう少しは苦しまなくて済んだかもしれないのに――いや、でも、あんな酷いことをしたのだから自業自得か。
いずれにせよ、私を襲おうとした人だ。もう二度と会いたくないと思っていた。二度と関わりたくない気持ちだった。だから、彼がこの世から消えたと知って、失礼ながら安堵した。これでもう彼に襲われることはない、そう思えるのが何よりもの救いだった。
ちなみに、エリオは最期に「死にたくないよぉ」とか「殺すなんて酷いよぉ、悪魔ぁ」とか言っていたそう。
――傷つけられそうになった殺されそうになった私の気持ち、少しは理解してもらえただろうか?
ま、それを確認することはもう二度とできないわけだけれど。
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あれから十年、私は今もルルア王子の妻として、彼と共に在る。
出発の頃はエリオのこともあって色々あったけれど、それを越えた私たちは、今に至るまでずっと一緒にいることができている。
ルルアと共に生きられる日々は何よりも尊い。
そして、彼との間にできた子がいてくれることも、私としてはとても嬉しいことだ。
私はこれからも彼と共に在ろうと強く思っている。
たとえどんなことがあろうとも。
嵐の日があったとしても。
それでも私は彼と共に在り彼を支えるのだ。
◆終わり◆




