幸せになれると思っていた。けれど彼は裏切った、婚約破棄を一方的に告げるという形で。ただ、私はそれでも、幸せになることを諦めない。
幸せになれると思っていた。
彼と婚約することが決まった日からずっと、彼と生きることを望み、彼と共に在り続けることを望んでいた。
その頃はまだ彼も私に甘い言葉をかけてくれていて。一緒に生きようと言ってもらって。約束をして。嬉しくて。その時の私はまだ純粋だったのか、定かではないが、それでも彼が発する言葉たちを素直に信じていた。
けれど彼は裏切った、婚約破棄を一方的に告げるという形で。
彼は己の気持ちだけを優先して私を捨てた。
その時気に入っていた女性と生きるために。
私には絶望しかなく。
闇の中を歩いているみたいだった――。
ただ、私はそれでも、幸せになることを諦めない。
きっといつかは。
幸福を掴んでみせる。
そう思っていた。
◆
あれから二年、私は愛する人と共に家庭を築いた。
微笑み合う時。
お茶を飲む時。
くだらないことを語らう時。
私は愛する人のことをとても愛おしく思う。
一方、かつて私を捨てた彼は、気に入っていた女性と結婚するも新婚一日目に自宅に入り込んだ賊によって殺められてしまったようだ。
◆終わり◆




