婚約者が城内で侍女を誘い続けて迷惑なうえ不愉快なので、婚約破棄することにしました。
「オーレンさん、貴方、城内でいろんな人たちに迷惑をかけているようですね。侍女の方にも夜の誘いを繰り返しているとか。皆困っていますよ」
私はこの国の王女。この城で育ってきた。そんな私にはオーレンという婚約者がいるのだが、彼は王女である私と婚約してからやたらと城内で自分勝手な行動をするようになった。
時には侍女に手を出そうとすることもあるらしい……。
そもそも、婚約者がいる身で他の女性にそういうことを求めるなよと思う。し、皆嫌がって迷惑がっているのだから、そのことに気づいてやめろよ、とも思う。
「は? いいじゃん。俺王女様の夫だしさ、ここじゃ王みたいなもんだよ。だから何してもいいんだ。べつに人殺ししたわけじゃないし!」
オーレンは私の正面に立っていながら平然とそのようなことを言う。
注意されているという自覚があまりないのかもしれない。
なぜゆえここまでマイペースでいられるのか完全に謎である。
「勝手なこと仰らないでください」
「何だようるさいなぁ。あ! もしかして嫉妬か? 俺がモテモテで悔しいとか?」
急に鼻の穴を大きく開け始めるオーレン。
見ているだけでも不快感がある。
今の彼には、気持ち悪い、という言葉がぴったりだ。
「侍女たちは皆迷惑がっています」
「あーあーそうかー嫉妬か! ああもう可愛いなぁ。でも! 俺を縛り付けるなんて無理なんだよ。分かったか? 分かったなら二度とそんなこと言うなよ? 王女だからって何でも思い通りにできると思うなよ」
彼が調子に乗っていることにもう耐えられなくなって。
「従わないのなら……分かりました。では、貴方との婚約は破棄します」
「はぁ!?」
「父に話します。良いですね」
「ちょっ、ま、まじ!?」
「今さら慌てても無駄ですよ。では……私はこれで、失礼します」
もう我慢できない。
彼と生きていく自信もない。
ならば終わりにしよう。
◆
その後、私は王である父とも相談して、オーレンとの婚約を破棄とすることが決定した。
婚約破棄の理由は、城内での悪い行い。
侍女らに迷惑をかけ続け注意しても応じようとしなかったから、である。
「そ、そんな……! 待ってください……! 誤解、誤解なんですよっ……!」
「お主はもう要らぬ。去ってくれ。お主のような男に我が娘を任せることはできぬのだ」
「し、しかし! 自分は誰よりも彼女のことを想っています!」
「愚かな。侍女に声をかけて回っていたそうではないか? そのような男は論外だ。絶対に娘を渡せぬ。もうよい、早く去れ」
「ま、待ってください!」
国王の前ではオーレンもさすがに失礼な振る舞いはできないようだ。
やはり私は舐められていたのか……。
「彼を拘束せよ」
「はっ」
オーレンは素直に従って去らなかった。
そのため彼は拘束された。
◆
それから数週間、オーレンは牢内で死亡したそうだ。
何でも周囲に女性がいない環境に耐えられなかったようで、それによってストレスを溜めすぎて、自ら命を絶ったらしい。
ま、彼らしい結末と言えば彼らしい結末と言えるかもしれない。
しかし、周囲に異性がいないから自死を選ぶとは……なかなか凄い。
◆
それから数ヶ月、私は隣国の王子と結婚することになった。
王子は真面目ながら冗談も理解できる人。
個人的にはとても好ましい人だ。
私は今、彼と共に生きていこうと、純粋にそう思えている。
◆終わり◆




