珍しく婚約者に呼び出されました。しかし嬉しくない出来事でした。~取り敢えず国王に頼んでくびにしてもらいましょうか~
ある日のこと、珍しく婚約者ルイデンに呼び出されたので不思議に思いつつ彼のもとへ行ってみると、急に熱いハーブティーをかけられた。
熱い。
危なかった、一歩誤ったら火傷を負うところだった。
「どうして、こんなこと」
「お前は俺の妹を虐めていたそうだな! ネネから聞いたぞ!」
「何ですかその話。心当たりがありません」
「しかしネネがそう言ったのだ、彼女がそう言うならそれは事実なんだ。なんたって、俺の可愛い妹だからな」
ルイデンはネネの主張を完全に信じ込んでいるようだ。
彼は代々城で働いてきた家の子孫だ。
なのに少々騙されやすい人である。
城という環境で生きているなら多少は騙し騙されもあるだろうに大丈夫なのだろうか? と、つい思ってしまったりもする。
「そんな恐ろしい女だとは思わなかった――よって、婚約は破棄とする」
こうして私は捨てられる。
名誉を傷つけられたままで。
◆
その後、話を聞いて強く怒った父は、絶対に許さんと言って聞かず――昔からの友人でもある国王に連絡して罰を与えるよう頼んだ。
その結果、ルイデンとネネは、仕事をくびになった。
二人とも城で働いている。それゆえ、雇い主は国王だ。無関係なところで働く人にまで手を出すことはいくら国王でも難しいだろう、しかし、城を職場とする人をくびにすることは簡単なことだったのだ。
急に職を失った二人は実家へ帰ることになったそうだが。
ルイデンは父親から「くびになるとは何ということだ! 一族の名誉を穢しおって! 消えろ!」と言われ、その際、衝動的に父親を殺めてしまったそうだ。
殺人犯となったルイデンは、近所の人によって治安維持組織に突き出され、拘束され牢屋行きとなったらしい。
また、その時ネネには婚約者がいたそうなのだが、ネネの兄であるルイデンが親殺しとなったために婚約の破棄を告げられてしまったらしい。
婚約破棄されたことを悲しんだネネは、数日後の晩こっそり家を出ていって、そのまま行方不明に。母親は必死に探したが見つけられなくて。それから一週間ほどが経って、やっと見つかったそうだが。その時にはネネは亡くなっていたそう。口に草が大量に詰まった状態で発見されたそうだ。
ちなみに私はというと、その後しばらくして気の合う相手と結婚することができた。
◆終わり◆




