婚約破棄された令嬢はのんびりライフを謳歌する! ~もちろん幸せも掴みますよ~
「お前はダサい! 顔は良いがぱっとしない! 特に胸を隠しているところなどはくだらない! そんな女を妻にしては、俺の評価まで低下してしまう。よって! お前との婚約は本日をもって破棄とする!!」
長い銀の髪が美しいと評判に美人令嬢エトーリカは、ある日突然、婚約者オーガンジからそのようなことを告げられた。
「前から実は嫌だと思ってたんだ。だっさー、と。うっざー、と。お前は美人だがそれ以外はごみだ、素晴らしい女性とはとても言えない。マイペース過ぎるところも不愉快だしな。だから婚約破棄することにした、それが理由だ」
オーガンジは鼻の穴を膨らませはすはす音を鳴らして「分かったか?」と発する。
いきなり婚約破棄を告げられれば普通は動揺するものだ。しかしエトーリカはそうではなかった。彼女は冷静さを欠いてはいなかった。
「分かりました」
エトーリカは笑顔を崩さない。
「では、失礼します」
そして速やかにその場から去った。
エトーリカとオーガンジの関係は終わった。
◆
婚約破棄から二年、エトーリカは実家にて穏やかに暮らしている。
「エトーリカちゃん! 誘ってくれてありがとぉ!」
「美味しいお茶が手に入ったので」
エトーリカには婚約希望者が殺到している。
オーガンジとの婚約が破棄となってからというものずっとそんな感じである。
しかしエトーリカはしばらくゆっくりしたいと考えている。
「へぇー! そうなんだ! ええ~嬉しいなぁ、ありがとぉ!」
「そちらのティーカップから飲んでください」
「わ! 綺麗な色!」
「ですよね、私も最初びっくりしました。とても綺麗な色みで。ここまで綺麗な色のお茶は珍しいですよね」
エトーリカの最近のブームはお茶会である。
彼女は知人を誘っていつもお茶をしている。
「あ、そうだ! お菓子持ってきたの! 食べて?」
「え、良いのですか」
「うんうん! オッケー! ほらこれ、食べてみてぇ」
◆
婚約破棄から三年半、エトーリカはめでたく王子と結ばれた。
彼女は今、城にいる。
エトーリカはそこでは皆から愛され大事にされている。
一方オーガンジはというと。
エトーリカが王子と結婚した数日後に家に賊に入られ、家族もろとも殺められてしまった。
彼に未来はなかった。
◆終わり◆




