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一方的に婚約破棄を告げられたのですが……そのおかげで幸せになれる道へ進めたので良かったです!

 決められた婚約者と結ばれ幸せになる。

 それが人生というものなのだと思っていた。


 その日が訪れるまでは。


「ピオレ、お前とは生きていく気はない」


 婚約者ダオスは続ける。


「よって、お前との婚約は破棄とする」


 まずは婚約の破棄を宣言し、それから彼はその理由について話した。

 だがその理由というのが勝手としか言い様のないもので。

 何かというと、『心奪われる人が現れたから』などという理由なのである。


 しかも彼は「もうお前を女とは見ることができない、だから去ってくれ」とまで言った。


 彼はきっと私を決して愛さないだろう。


「……分かりました」

「分かったならいい、さっさと出ていってくれ」

「はい……そうですね」


 私たちが交わした言葉はそれで最後となった。


 こうして二人の関係は終わる。



 ◆



 実家へ戻って数週間後、私は、街の花屋で一人の黒髪の青年に出会う。


「お花が好きなんですか?」

「あぁはい、そうなんですよ。貴女も?」

「はい! とっても綺麗で、眺めているだけでも癒やされますっ」

「そうか……そうですよね」


 お互い花が好きということもあって、彼とはすぐに打ち解けた。


「でも、貴女も綺麗ですよ」

「えっ」

「はは、すみません急に。これは冗談みたいなものです。では、また今度」


 それから彼とは何度も顔を合わせた。

 最初のうちには花屋へ行くことで会っていたのだが、徐々に仲が深まるとお互いもっと踏み込んで関わりたいと思うようになり、そのうちに二人で会うということまでするようになった。


 もちろん、健全な関係だ。


 喫茶店に入って話をする、くらいのものである。


 それから数年、私は黒髪の青年と結ばれた。


 婚約うんぬんの話が出る頃になって、彼がとある国の王子であることが発覚。それを知った時はかなり驚いた。が、彼との進展を止めるものは何もなく。波に乗るように話は進んでゆき、やがて私は彼と婚約。その後、式を挙げ、正式に夫婦となった。


「これから色々教えてください」

「もちろん。こちらこそよく分かっていないことも多いと思うけれど、よろしく」


 結婚式の日にそんな会話をしたのも、もう思い出の中。


 しかし夫婦仲は今でも悪くない。


 彼は誠実な人だ。

 育ちが異なる私のことも理解しようとしてくれるし、いつだって真っ直ぐに向き合ってくれる。


 それは結婚して時が経っても変わらない。


 私は生まれ育った国からは出ることになったが、そのことを後悔はしていない。

 むしろこの道へ進めて良かったと思えている。


 ちなみにダオスはというと、私が王子と結婚したのと同じ時期に自国内で『ピオレの悪いところを皆に知らせる会』などという謎の会を一人で立ち上げたそうだが、その活動が過激になりすぎたために治安維持組織に捕まってしまったそうだ。


 また、数ヵ月経って解放はされたようだが、その直後馬車同士の衝突事故に巻き込まれて落命したとのことである。



◆終わり◆

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