婚約者の妹にはめられ婚約破棄されたうえ殺されかけましたが、処刑の直前に意外な人が助けてくれました。これからは隣国で幸せに生きます。
「お兄様! あの女はお父様を殺そうとしたのよ! 国王を殺そうだなんて、最低の女! 魔女よ!」
そう叫ぶのは、私の婚約者であり王子でもあるオッフェンの妹リリシア。
そして、それを信じたオッフェンは。
「ルレイシリア! 悪女たる君と婚約などしてはいられない! よって、婚約は破棄とする!」
「な。お待ちください、何かの間違いです。私は国王暗殺を企んでなどおりません」
「何だと!? 我が妹リリシアが嘘つきだと言うのか!? 婚約者というだけで調子に乗りやがって! 王女リリシアの名誉を傷つけるのか!?」
「そのような意図ではありません。私はただ事実を述べているだけです」
「ふざけるな! ああもういい、君は死刑だ!」
何ですって!?
急に死刑を決定!?
そんなこと、権力を悪用しているようなもの。
許されることではない。
王子とはいえ勝手過ぎる。
だが、王子がそう言ってしまうと、周囲は誰も反対できなくて――私は死刑となることが決まってしまった。
◆
そして迎えた処刑の日。
私は命を終わらされるその場に立っている。
「ただいまより、ルレイシリアの処刑を行――」
「待ちなさい!」
処刑の場に突如現れた見知らぬ女性。
長い金髪が風に揺れている。
「な、何者か!」
「その女性を解放しなさい。彼女に罪はありません」
「なっ……」
「国王暗殺はそちらの女性が行ったのではありません。リリシア王女の一派が行った自作自演、その女性をはめるための罠です」
金髪女性はそう言ってからこちらを見て微笑む。
「ルレイシリアさん、手を取ってください」
「あ……ありがとうございます」
「貴女は処刑などされません。私がそう誓います。ですからご安心を」
「え、っと……貴女は、一体……?」
「私はエリア――隣国の王女です」
私を助けてくれたのは隣国の王女であるエリアという人物だった。
どうやら、隣国の王家とも交流があった私の父が、王家の者に助けを求めたようで。その求めに一番に応じてくれたのが彼女だったみたいだ。同じ王女としてリリシアの行いが許せなかったから協力した、と、エリアは言っていた。
こうして解放された私は、親と共に隣国へ移り住むこととなった。
◆
その後私はエリアの兄である隣国の王子プレステトと結婚することになった。
彼との日々は楽しく。
また、エリアも含めて三人で喋ったりお茶をしたりするのも、とても楽しかった。
いつまでも三人でいたい――純粋にそう思えたくらいだった。
ちなみに、やらかしたことを怒った国王によって、子たちは罰を与えられることとなったようだ。
自作自演で父を殺めようとしたうえ兄の婚約者に責任を押し付けることをしたリリシアは、数年間にわたって牢に入れられ自由を奪われるという罰を与えられることとなった。
そして、オッフェンもまた、妹の嘘を見破れず信じ込んだうえ婚約者を切り捨て勝手に処刑を決定したために、数年間の強制労働という罰を受けることとなった。
――ということのようだ。
国王は己の子らがそのようなことをしたことを恥じていたようで、私に謝罪もしてくれた。
ま、今はもう、その件についても特に深く気にしてはいない。
これからは彼らとは無関係。
だからもう過ぎたことはどうでもいいのだ。
私はここで幸せに生きる。
◆終わり◆




