愛されなかった女ですが婚約破棄後愛される存在になれました!
私には、十八の時親同士の契約によって婚約することとなった婚約者がいた。彼の名はリューピン。見た目はそこそこ良く、性格の評判も悪くはない、そんな人物であった。
しかし彼は私のことを見ようとはせず。
愛するどころか受け入れようとさえしなかった。
彼は周囲にいつも「あんなごみを押し付けられて最悪だな」とか「あれと一生を共にするなんて耐えられねぇ最悪だ」とか言っていたようだ。
そして私に対してはほぼ無視。
用事があってこちらが話しかけても聞こえないふりをすることがほとんどであった。
私はとにかく愛されなかった。
女友達からよく憐れみの言葉をかけられたほどだ。
そんな私がリューピンに呼び出されたと思ったら。
「悪いが君とはもう無理だ。なんせ君は俺の好みから大きく外れている。そんな女性と生きていくことを考えるだけで病気になってしまいそうなんだ。ということで、君との婚約は破棄とする」
リューピンは真面目な顔でそんなことを言ってきた。
向こうから連絡してくるなんて珍しいな、と思っていたから、婚約破棄を告げる目的だったと知ってもそれほど驚きはしない。むしろ納得したくらいである。これが別の良心的な用件だった方が逆に戸惑ったと思う。
私は婚約破棄を受け入れた。
ここで彼だけに固執することもない。
そう思ったからである。
見据えるのは未来だけで良い。
◆
リューピンと離れた翌日、とある人物から父親に連絡があり、私への婚約の話が届いた。
婚約破棄されたら早速?
戸惑いはあった。
けれども未来のためにはそれもありかもしれないと思って。
前を向いて進むことにした。
「今日はありがとうございます」
「いえ」
「アングレと申します」
「アングレさんですね。お誘いありがとうございました。今日はよろしくお願いします」
こうして私は領地持ちの家の子息であるアングレと対面した。
少しばかり話をしてその日は別れたのだけれど、その後また何度か顔を合わせることになり、そうしているうちに段々仲良くなっていって――気づけばアングレと婚約することとなった。
「わがまま言ってすみません」
「え、いえ! そんなこと。わがままだなんて。そんなことはありませんよ、むしろこちらばかりがお世話になっていて」
「いえいえ。ただ、とても寛容に接していただけて……本当に、嬉しく思っております」
こうして私はアングレと結ばれた。
結婚してからも、アングレは親切だった。
妻となった私にでも心優しく。
いつも温かな眼差しを向けながら接してくれていた。
私は今、愛されて生きることができている。
◆
ちなみにリューピンはというと、あれから私ではない女性と婚約したそうだが、婚約者がいる身で他の女性とも夜遊びしていたことが発覚したことで婚約を破棄され、さらに凄まじい額の慰謝料を支払わされることとなったそうだ。さらに、婚約者の女性の父が偉い人でその人が激怒したこともあって、数年間の拷問刑に処されることとなってしまったらしい。
◆終わり◆




