いつも大好きと尊敬していると言ってくれていた妹に裏切られました。
「お姉様のこと、大好きよ! 誰より尊敬しているわ!」
妹ルミエラはいつもそう言ってくれていた。
穢れのない、純粋な笑み。
それが何よりも愛おしくて好きだった。
なのに――。
「ミリア、悪いが、君との婚約は破棄とさせてもらう。理由は一つ、君の妹さんに惚れてしまったから、それだけだ」
ルミエラは私が知らないところで私の婚約者オーディンと関わりを持っていた。
「ルミエラ……どうして、こんな……」
「何よ! お姉様! あたしに責任を押し付けでもするつもり?」
「どうして婚約者を奪うような真似を」
「奪う? 馬鹿ね! お姉様よりあたしの方が可愛くて魅力的だった、それだけのことじゃない!」
この時になって、ルミエラの本性を初めて知ることとなった。
「やっぱお姉様は馬鹿ね。ま、前からそう思っていたけれど」
「何を、言って……」
「だってそうでしょ? 大好きとか尊敬してるとかちょっと言ってればあたしのために動いてくれる馬鹿な姉だーってずっと思ってたの」
「そんな……ルミエラ……」
「ま、いいわ! お姉様との関わりはここまで! じゃあね、お馬鹿な残念お姉様」
こうして私は、大好きだった妹も婚約者も、同時に失うこととなった。
ルミエラの言葉を信じていた私は馬鹿だったのか……。
彼女の言葉だからこそそのままの意味で理解していたのに……。
それからしばらくは立ち直れなかった。
でもいつかは徐々に回復して。
徐々に立ち直る方向へと向かってゆくのだ。
時間はかかってしまうけれど――。
◆
あれから数年、裏切られたことによるダメージから何とか立ち直った私は――めでたく、結婚できることとなった。
夫は蛙のような面持ちの人で、周囲からは「不細工じゃない? あれが夫とかなくない?」と言われもしたが、私は彼を選んだ。
なぜなら、彼といると安心できるから。
容姿も大切な一つの要素であること、それは分からないでもないけれど、それでも容姿がすべてではないと思う――あくまで私の考えだが――だからこそ、彼と共に生きてゆくことを選んだ。
「選んでくれてありがとう」
「いえいえ」
「あの……きっと、色々、言われたんじゃない? こんな顔だし……」
「いいの。貴方といるとほっとできるから。そこが一番好きなところよ」
「……ありがとう」
「実はね、夫にするなら安心できる相手がいいなって思っていたの」
「ありがとう、本当に」
辛いことがあっても。
苦しいことがあっても。
きっと乗り越えていけるはず。
「いいえ、お礼を言うのは私よ。貴方が共に生きることを選んでくれて嬉しかったわ。平凡な私だけれど……私に決めてくれてありがとう」
そうそう、そういえば。
ルミエラとオーディンはあの後結婚したそうだが、ある時散歩中に飛びかかってきた鳥を地面に叩きつけたことから山賊に恨まれたそうで。二人が、自分たちが住むために用意した家にいた時に、復讐とのことで山賊に襲撃されてしまったそう。そうして、ルミエラとオーディンは落命したそうだ。
ちなみに、山賊らは「可愛い鳥を地面に叩きつけ殺めたのだから当然の復讐だ」と言っているようで、ルミエラとオーディンを殺めたことを悪かったとは一切思っていないのだそうだ。
◆終わり◆




