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恋する乙女は婚約破棄されて凄まじい泣き方をする。~しかもその鳴き声が謎の現象を起こし~

 とある島国。


 一人の恋する乙女がいた。


 彼女の名はルルナ。

 彼はずっと憧れていた男性と婚約し幸せの絶頂にいた、のだが。


「ルルナ、君との婚約は破棄とさせてもらう」


 その日、そう告げられてしまって。


 最初はぽかんと口を空けることしかできず。しかし、時が経つに連れて徐々に状況が掴めてきて。掴めてきてしまったがために、彼女の丸い瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちる。


「そ、そん、そ、そん、な……」


 彼女の唇は震えて、そして。


「びゅええええええええええええ!!」


 次の瞬間、彼女は大声をあげて泣き出した。


 思わず耳を塞ぐ婚約者。


「びやぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああああ!!」


 無意識に緩急をつけながら豪快に泣くルルナ。

 今の彼女には躊躇や遠慮は一切ない。

 彼女は感情のままに声を発し涙を溢れさせている。


「どうぢでえええぇぇぇぇぇぇえええぇえぇぇえええええぇぇぇぇぇ! びやあぁぁぁぁ! ずぅぅぅぅぅどおおおおぉぉぉぉぉ! ずぎだっだぼにいいいいいいいぃぃぃぃいいいいいぃぃいいいぃぃぃぃぃぃぃいいいいいぃぃぃぃいい! び、び、びどおおぉぉぉいぃぃぃぃぃ!!」


 ルルナは言いたいことを言いながらも泣くことをやめない。


 鼓膜が破れそうな大声を発することもやめない。


 彼女をとめられる者などいないのだ。

 つまり、一度こうなってしまったら終わり、ということである。


 一番近くでその泣き声を聞くこととなった婚約者の彼は、最初のうちは耳を塞いで耐えていたが、一分もしないうちに凄まじいめまいに襲われる。立っていることができなくなり、その場に座り込んでしまって。さらに一分くらいが経過した頃、意識を失い、地面に倒れた。


 ルルナに婚約破棄を告げた婚約者、彼が、ルルナの泣き声による最初の死者となった。


「どうぢでえええぇぇぇぇえええぇえぇぇえええええぇぇぇぇぇっ! どうぢでどんなごどおぉぉぉぉぉ! かなぢいぃぃぃぃぃぃ! ずで、ずで、ずでないでええええええーっ、びやああああああああ!」


 彼女が泣いた衝撃で国の周囲の海が割れる。

 そして深海から山がせりあがってきた。

 それほど大きくない島国だったが、せりあがってきた山によって、一気に領土が増加する。


「あああああああ! づらいぃぃぃぃい! びどいぃぃぃぃぃぃ! ごんやぐ、はぎ、なんでえぇぇぇ……じないでえええええええええっ!!」


 数日後。

 ルルナはようやく泣き止んだ。


 それと同時に島周辺の地形の変化も収まった。


 専門家たちは「この急な地形の変化は一体何だったのか」という疑問を抱き調査を開始するが、まさか一人の娘の泣き声に関係しているとは思わず、ルルナには目を向けなかった。そのため、謎の地形変化の原因が突き止められることはなかった。もっとも、いくつかのそれらしい案は出されたわけだが、どれも完璧ではなかった。


 ただ、領土が増えたことで、国はそれまでより豊かになった。


 ルルナはある意味救世主とも言えるだろう……国にとっては。



◆終わり◆

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