お姉さまなんてごみよ! とか言っていた妹は、婚約者から婚約破棄されたことで終わりへと向かっていくこととなりました。
「お姉さまなんてごみよ! でもあたくしは違う。あたくしは誰からも愛される存在なの! ……あたくしとお姉さま、姉妹なのに全然違っているわね」
私の妹であるエリリは己を非常に価値のある存在だと思っている。
いや、彼女に価値がないと言う気はないし、命というのは一つ一つが尊いものであって、彼女の命もまた例外ではないのだが。
ただ、彼女の厄介なところは、ことあるごとに絡み自分を上げるために私を下げてくるところである。
ごみ。
魚の余った部分。
空き箱。
彼女はいつも私をそんな風に言った。
どうしてそんなことが言えるのだろう……。
これでも実の姉だというのに……。
そんなエリリは、十八になった日に、一人の青年と婚約した。
婚約相手は彼女がずっと憧れていた人。
というのも、エリリがその人と結ばれたいと言うので親が必死になって話を持ってきたのである。
「あーあ、これでもう、ごみなお姉さまと一緒にされなくて済むわね~」
婚約が決まった直後もそのようなことを言われた。
だが婚約から数ヶ月が経って。
毎日のように婚約者のところへ行っていた彼女は、ある日、急に泣きながら帰ってきた。
「おかあざまぁぁぁぁぁぁ、おどうざまぁぁぁぁぁぁぁ、婚約破棄ざれだぁぁぁぁぁぁ」
妹は婚約者に切り捨てられたそう。
その理由は「わがまま過ぎる」というものだったらしい。
それからというもの、超絶自信家だったエリリはどこかへ消えてしまい、彼女は毎日のように死のうとするようになった。
私にできることはない。なのであまり関わらないようにしておいた。下手に関わって何か起きてしまっても悪いので、離れたところから見守るだけにしておいた。一応無関心ではない、見ているだけ、だ。
そして。
それから数週間が経ったある日、エリリは、自室にて死を選んでいた。
誰からも愛される、そう言っていた彼女はもう……この世にはいない。
◆
それから数年、私は王子に見初められ、彼の妻となることとなった。
城での暮らしは新鮮で。
知らないことも多く戸惑いもありはしたけれど。
それでも嬉しいこともある。
夫に愛される、それが何より嬉しい。
ごみとか何とか言われていた私ではあるけれど。
愛されることはできた。
◆終わり◆




