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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


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婚約者の母親は魔法が大嫌いな人で、それが原因となって婚約破棄されてしまいました。~そして彼女は魔法より死を選ぶ~

 親が魔法使いだったこともあり私もまた幼い頃から魔法を使ってきた。親と共に便利屋を営み、魔法を使って、多くの人の困り事を解決してきた。そんなこともあり、客である人たちからはいつも感謝されていて。笑顔でありがとうと言ってもらえるのが嬉しくて、誰かのために魔法を使うことも大好きだった。


 けれど、それを受け入れてくれない人というのも、世の中にはいて。


「あなた、魔法なんかを使うそうね?」

「はい」

「邪術を使う女なんかに我が家の息子を渡すことはできないわ」


 婚約者オーリジの母親は魔法を嫌う人間だった。


 魔法使いも徐々に理解されつつある世ではあるけれど。

 しかしいまだ反対派も存在し。

 魔法を使う者を悪く思い批判する者たちもいるのだ。


「よって、あなたと我が息子の婚約は破棄とするわ!」


 オーリジの母親はそう宣言する。


「怪しい女、二度と私の息子に近づかないで。我が家にあなたみたいな穢れた血の女を入れたくないの」


 私は「オーリジと話をさせてほしい」と言ってみたのだが、オーリジの母親はそれを許してはくれなかった。彼女は「そう言って、我が息子を洗脳でもするのでしょう? 魔女が、穢れた女が、考えることなんて分かっているのよ」と言って、オーリジとは絶対に話させてくれなかった。


 こうして、オーリジとの関係は、オーリジと話せもしないまま終わってしまう。


 悲しく。

 切なく。

 虚しい。


 そんな終わり方だった。



 ◆



 婚約破棄後、私は、誰かと結婚することは諦めた。


 もしまた同じようなことになったら。

 ついついそう考えてしまって。

 そうなると誰かと結ばれるために動く気にはなれなかったのだ。


 私は魔法で生きていこう。

 人々のために働こう。


 そう決意して。


 便利屋の仕事により一層力を注ぐようになっていった。



 ◆



 あれから十年、私は今、便利屋の店主として日々働いている。


 営んでいた親は生きてはいるが既に引退した。今では時折手伝ってくれる程度で。基本的には私が中心となって店主として働いている。最初は上手くやっていく自信がなかったのだが、いざ始めてみると案外上手くいって。元々の常連客が温かく関わってくれたということもあり、活動を順調に進めていけた。


 困っている人、泣き出しそうな人、そういった人たちがこの力によって笑顔になる。


 それが何より嬉しくて。


 だからこの仕事は私にぴったりだと思う。


 そうそう、そういえば。


 オーリジの母親はあの後喧嘩した旧友からかけられた呪いによって体調を崩し、それからしばらくして、亡くなったそうだ。

 呪いを消す魔法治療を受けたほうが良い、と医師は助言したそうだが、彼女は頑なにそれを拒んでいたそうだ。

 穢れが移るから魔法治療は絶対に嫌、と、ずっと言い張っていたとのことである。


 少しでも主張を落ち着けたなら助かったかもしれないのに……。


 でも、彼女にとっては、死より魔法が嫌だったのだろう。


 ならばこれで良かったのかもしれない。



◆終わり◆

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