可愛がってもらおうと思う心持ってるの? とか言ってきたうえ婚約破棄してきた彼、一人寂しく落命することとなったようです。
「あんたって、可愛がってもらおうと思う心持ってるの?」
婚約者オリーウェルが急に尋ねてきた。
今日は彼に呼ばれてお茶をしている。
珍しいことだが。
彼の方から連絡してくれて二人きりのお茶会に誘ってくれたのだ。
「え」
「可愛がってもらおうと思う心持ってるの、って質問したんだよ」
「それは……一体、どういう意味、で……?」
「物分かり悪いな。そのままの意味だよ。それ以外何があると思ったんだい? 普通に、言葉のままの意味の問いだよ、それだけ。で、どうなの? 早く、ちゃんと答えてよ」
つい先ほどまではそんなことはなかったのだが、彼はなぜか苛立っているようだ。
「オリーウェルさんと一緒にいたいとは思っています」
「答えになってない!」
怒られてしまった。
「可愛がってもらおうと思う心持ってるの? って聞いたんだよ! ちゃんとした答えを言え! はっきりと!」
苛立ちが爆発したオリーウェルは、わざとらしく数回深呼吸をした後に、溜め息をついてから発する。
「ま、もういいや。――あんたとの婚約、破棄するよ」
終わりは突然やって来る。
それは事実だった。
◆
オリーウェルに急に切り捨てられた。そのショックは小さくなくて。それからしばらくの間、私は毎日憂鬱だった。喋るのも嫌、食べるのも嫌、と思うくらい、心が重かった。
けれども、療養のために別荘へ移り住んだことで状況が一変する。
新しい地。
慣れない場所。
でも美しいところ。
そこで巡り会ったのだ――運命の相手とさえ思えるような一人の青年と。
「また、お話をしたいです」
「えっ」
「どうでしょうか? 構いませんか? ……よければ、ぜひ、もっとお話ししたいと思って」
「う、嬉しいです……ありがとうございます……」
私たちはすぐに惹かれ合った。
もっと知りたい。
もっと言葉を交わしたい。
できるなら近くにいたい。
心は既に結ばれているかのようだった。
彼の名は――ポートレー。
◆
その後私はポートレーと結婚した。
私たちは磁石のように引き寄せられ合った。
一度出会ってしまったら離れられず。
ずっと昔からの親友であるかのように心は通った。
今は夫婦となった私たち。
関係は良好なままだ。
きっとこれから色々なことがあるだろうとは思う、が、それでも私はこの良き関係を維持していきたいと考えているし彼にもそう伝えている。そして、彼もまた、同じように思っていると言ってくれている。
私たちはもう離れない。
ちなみにオリーウェルはというと、ある時一人で倉庫を整理していたところ大量の缶詰が棚の上から落ちてきて転倒――その際に運悪く頭を打ってしまい――しかも、しばらく誰にも気づかれず放置されていたため、そのまま亡くなったそうだ。
発見された時には息絶えていたらしい。
◆終わり◆




