さくっと婚約破棄を告げられたなら……笑顔でさくっと幸せになるしかないですよね!
婚約して、結婚して、特別な二人になる。
結ばれて。
心は通い合って。
夫婦になって、時に喧嘩したりしながらでも、波も山も谷も一つずつ乗り越えて――そうやって生きていくのだと思っていた。
「わり、お前との婚約だけど破棄するわ」
婚約者オーガス・エンブロフィニア。
彼はその日その瞬間さくっと婚約破棄を告げてきた。
「え、待って。冗談……よね? でしょ? 冗談だよね……?」
「冗談とかじゃねーって」
「え。じゃ、じゃあ……もしかして、本気なの?」
「あたりめーだろ」
彼は黒い笑みをこちらへ向ける。
「分かったか? じゃ、終わりな。ばいばい」
こうして私が見ていた未来は消え去った。
婚約して、結婚して、特別な二人になる。
結ばれて。
心は通い合って。
夫婦になって、時に喧嘩したりしながらでも、波も山も谷も一つずつ乗り越えて、生きていくのだと思っていた――でもそれは私には訪れない未来だったのだ。
信じられない――。
婚約破棄されたこと、それも衝撃ではあるのだけれど、あんな風にさくっと告げられたことがその衝撃をより一層大きなものにしている。
そんな軽いことなの?
貴方の中で私ってそんな軽い存在なの?
そう思うから、余計に、もやもやしてしまうのだ。
でも――私はここで立ち止まりはしない、そう決めた。
さくっと婚約破棄を告げられたなら……笑顔でさくっと幸せになるしかない!
笑っていよう。
前を向こう。
そして光のように生きてゆくのだ。
それがいい。
◆
数ヶ月後、私は一人の青年と知り合う。
彼は私より五つ年上。
けれども年が上だからと威張ることも自慢げに振る舞うこともない。
いつも温かく見守ってくれる彼が好き――そして、私は、交際の後に彼と結ばれることとなった。
◆
こうして幸せな家庭に入り生きられることとなった私とは対照的に、オーガスは孤独な道を行くこととなってしまったようだった。
彼は、街をうろついて通行人の女性に話しかけようとしていたもののなかなか上手くいかず苛立ち、痴漢行為を働いてしまったそう。しかしその時は通報されなくて。味を占めた彼はそれからも痴漢行為を繰り返すようになったそうだ。
で、十回目に通報され、治安維持組織に拘束される。
一度目の拘束だったため少しして解放はされたが。
父親からは「我が家の恥だ、帰ってくるな!」と家に入れてもらえなくなったうえ縁を切ると言われてしまったそう。
そのことにもやもやしたオーガス。
また痴漢行為に走ってしまう。
そして、それから何度も拘束と数年後の解放を繰り返したそうで。
四回目についに処刑となったそうだ。
◆終わり◆




