私には婚約者がいましたの。けれども彼は裏切りました。私の親友と裏で関わりを持っていたのです。
私には婚約者がいましたの。
けれども彼は裏切りました。
私の親友と裏で関わりを持ち、しかも、常識の範囲内とはとても言えないような過剰な関係性にまで発展していたのです。
彼のことを愛していなかったわけではありませんわ。それに、小さなことにまであれこれ口出しして彼から自由を奪う気も、特にはありませんでした。その証拠に、これまでたまに女性と関わっているところを見ても見て見ぬふりをして差し上げてきました。
けれども!
今回ばかりはもう許すことはできませんわ。
だって彼――彼女と、夫婦が行うようなことを行っていたのですもの。
論外ですわ。
さすがに許せません。
話になりませんわ。
「貴方との婚約は破棄致します。これまでは見ぬふりして差し上げていましたけれど、今回はさすがにそういうわけには参りませんので。ではこれにて。さようなら」
そう言って、彼を切り捨てました。
その日は泣いて泣いて。
けれども夜が明けたら。
もう泣きはしないと心を決めたのです。
私の未来は終わったわけではない、ならば、真っ直ぐに前を向いて歩まなければ。
私は負けません。
あ、ちなみに、彼から慰謝料をもぎ取ることには成功しましたわ。父の知人にそういうことに詳しい人がいたのです。その人に協力していただいて、無事、支払ってもらうことができました。
その点は、良かったですわ。
◆
その後私は城でしばらく働いた後に直系ではないものの王族の子孫である青年と結ばれました。
で、今は、城に住んでいるのです。
もちろん、直系の王族に比べれば、扱いはいまいちですけれど。でも、それでも、そこそこ良い暮らしはできるのです。おかげで暮らしにおいて困ることはありません。
夫もとても良い人ですし。
日々、幸せに暮らせています。
ちなみに、元婚約者の彼はというと――あの後も私の元親友と仲良くしていたようですけれど、結ばれ幸せに、とはいかなかったようですの。というのも、婚約もしていないうちに元親友が子を宿してしまったそうで――そのことを知った彼女の父親が元婚約者の彼に対して激怒し、二人を強制的に引き離したそうなのです。そんなこともあり、二人は結ばれることはできずに別れることとなってしまったそうですわ。
元婚約者の彼は好きな人に会えなくなったことで正気を失ったらしく。
以降情緒不安定になり。
毎日のように自宅で暴れるようになったとか。
また、飲酒も酷くなったそうですわ。
一方。
元親友の女性もまた、愛する人と会えなくなったことで悲しみのあまり毎日泣いていたそうで。
彼女は、ある日の夜、突如死を選んだそうです。
親も気づかないうちにあの世へ旅立ってしまっていたとか。
――ま、既に先へ進んだ私からすれば「だから何?」という感じですけれど。
◆終わり◆




