突如告げられた婚約破棄、その原因は婚約者が私の妹に惚れたことでした。妹がいたために私は捨てられたのです。しかし……?
「悪いが、君との婚約は破棄させてもらうよ」
告げられた言葉。
婚約者ブルテルネストが突如発した言葉。
それは、終わりを告げる言葉だった――。
「ごめんなさいねぇお姉様! あたし、すぐ惚れられちゃうたちでぇ~、だからブルテルネスト様にも気に入られちゃったのぉ~」
「あ、一つだけ礼を言っておくよ。こんなに可愛い妹さんに出会わせてくれてありがとうございます。君のおかげで、運命の相手に出会うことができたよ」
しかも、婚約者を奪ったのは、私の実の妹だ。
「ブルテルネスト様ぁ、早速婚約してくださるぅ?」
「ああもちろん、もちろんだ。すぐに手続きを始めようよ」
二人は私の目の前であっても躊躇なくいちゃつく。
今まさに捨てられたところの私への配慮なんて一切ない。
彼らの瞳にはもう私なんて映っていないのだ。
「いやぁ~んうれすぅ~い~」
「結婚式も今から楽しみだね。美しい女性と結婚できるなんて思っていなかった、だからこそ、今とても嬉しく思っているんだ」
「それってぇ、あたしが美しい女性ってことぉ? いやぁ~ん嬉し~」
「はは、可愛いな」
◆
一年後、ブルテルネストと私の妹の結婚式の日、私は風邪を引いてしまって起き上がれなかったため実家の自室にこもって休んでいた。
(いまごろめでたく盛り上がってるかなぁ……まぁでもいっか、幸せな二人を生で見るのも辛いしなぁ……)
咳をしながらそんなことを考える。
ベッドの脇のデスクに置かれたグラスを持って。
ぬるい水を口腔内へ注ぐ。
その水はどこか甘い気がした。
◆
結婚式の日、結ばれた二人は死んだ。
式典の最中会場に賊が殴り込んできたそうで、賊たちはなぜか新郎新婦だけを狙ったそう――そして、ブルテルネストと妹は、皆がいる前で殺められてしまったそうだ。
賊らは参加者には手を出さなかったようで。
ただの参加者だった人たちは怪我も特にはなかったようだ。
なぜ二人だけが狙われたのだろう――?
少しばかり不思議に思う。
けれどもその謎が解決されることはなく。
そのうちに、皆、過去のこととしてその事件のことを忘れていった。
◆
ちなみに、私はというと、事件の数年後に海外の文化である納豆づくりを仕事としている男性と結婚した。
結婚式も無事執り行われ終了。
私はめでたく想う人と結ばれることができた。
◆終わり◆




