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婚約破棄が人生を変えました。~良家の令嬢は戦乙女へと変貌する~

 良家に生まれ、大事にされ、穏やかに育った一人娘アデリア。


 彼女は家のためということもあって同じような家柄の出である男性と婚約。

 そのまま女性としての平凡な人生を行くかと思われたのだが。


「きみみたいな上品過ぎるやつは嫌なんだよな、大事に扱ってくれーって言われてるみたいで不愉快なんだ」


 婚約者ロロノモスからそう言われたアデリアは言葉を失う。


「よって、婚約は破棄とする。いいな」

「待ってください、そのようなこと……いきなり過ぎ、ま……」

「うっさい! 黙ってろ!」

「あ……」


 ロロノモスはどこまでも心なかった。


「いいからとっとと消えろ! じゃあな。これでお別れだ!」


 勢いのままに婚約破棄されてしまったアデリアは、悲しみながらも、彼の家から静かに立ち去った。


 その後は実家で暮らすようになった。が、なかなか心が回復しない。婚約破棄されて以来、アデリアは泣いてばかりだ。もとの笑顔はなかなか戻らない。


 彼女を大事に育ててきた両親は可愛い娘のことを心配し、やがて、彼女を旅行に連れていくということを思いつく。


 それはある意味賭けだった。


 そうして始まる家族旅行。

 その中でアデリアは兵というものを知る。


 兵の訓練場を見た瞬間に衝撃を受けた彼女は、その道へ進みたいと言い出す。


 もちろん両親は反対した。


 いきなりそのようなことをするのは無理だし、絶対辛い。

 そう言った。


 それでもアデリアは譲らなかった。


 やがて根負けした両親はアデリアの望みを叶えるべく動き出す。


 アデリアは喜んで荷物をまとめて家を出ていく。


 出発の日、両親は、かなり久しぶりにアデリアの笑顔を見た。


「あなた、これで良かったの?」

「あれは仕方ない……俺だって嫌だがやるしかないんだ」

「心配だわ」

「俺も。でも、笑顔は取り戻せた」

「これからどうなるか……」

「そうだな。だがそれも彼女が選んだ道だ」

「……そうね」


 アデリアは身一つで新たな世界へ飛び込んでゆく。



 ◆



 それから十年と少しくらいが経ち、戦場で活躍したアデリアは『偉大な戦乙女』と呼ばれる存在になった。


 彼女には才能があった。

 周囲を圧倒するほどの才能と、努力し続ける才能、その両方を彼女は備えていた。


 彼女は今、国で一番注目される女性となっている。


 国王からの表彰は断ったが……。


 だが、もはや彼女には表彰など不要かもしれない。

 それほどに彼女は有名だ。

 国に生きる者、誰もが、彼女の存在を忘れはしないだろう。


 ちなみにロロノモスはというと、街中で買い物をしている時にひったくりに鞄を奪われ、その中に入っていた彼の恥ずかしい写真を人質に大金を払わされることとなってしまった。


 しかも災難だったのはそこだけではない。


 言われた通りに大金をきちんと支払ったというのに、結局恥ずかしい写真もばらまかれてしまったのだ。


 その後もそういった災難は続く。

 彼は生涯何かと不運だった。



◆終わり◆

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