愛されなかった令嬢は死後元婚約者らに復讐する。~次の人生では幸せに~
エリカ・フロレイアはそこそこ良いとされる家柄の出であった。
お金に困ることは特になく、裕福な環境で育つことはできた彼女だが、一方で十五の時に父親が再婚してからは義母に虐められて酷い扱いをされてきた。義母はエリカのことが気に食わなかったようで彼女を徹底的に虐め、さらに、敢えて性格が悪い男を連れてきて婚約させた。それからのエリカは、義母からも婚約者からも日々心ないことをされ、一切愛されず生きてきた。
で、二十歳の春、エリカは自ら死を選んだ。
彼女には希望はなく。
幸せな未来を思い描くこともできず。
それで、生命を手放したのである。
そうしてエリカは死亡したのだが、彼女は死後の世界にて長い白髭をたくわえた神に出会い、その神から復讐のための力を授けられる。その力というのは、望みを叶えすべてを思い通りにできる力であった。ただし、それは一年しか使えない。エリカに与えられた復讐のための時間は一年であった。
エリカはまず実家へ戻った。
そこは二度と踏みたくないと思っていた地。
けれども復讐のためであれば。
そこへ赴くことへの躊躇いは一切なかった。
エリカはまず義母を殺めた。獰猛な獣を使って。それは、生きて食われるという恐怖の味を義母に堪能させることが目的だった。一瞬で死んだなら意味がない、彼女はそう考えていたのだ。
義母は悲鳴をあげながらあっさりと死んだ。
現在の妻である義母を失った父は、それによって、号泣し奇声をあげながら走り回るような状態になってしまった。また、数日後には赤ちゃんのような精神状態にまで退行してしまった。すべて垂れ流し、自分の生活の最低限のことさえできないような状態となってしまった。
それを見届け、エリカは忌まわしい実家から去った。
その後、エリカは元婚約者のところへ行く。そして、己が死んだことで彼が別の女性と婚約していたことを知る。とはいえ、それ自体はどうでもいいことで。ただ、それを利用しようと考え、エリカは女性が元婚約者の彼を嫌いになるよう術をかけた。
で、元婚約者は、女性から婚約破棄されることとなった。
「お願いだからもう二度とあたしの視界に入らないで、気持ち悪いの。もう無理なの。絶対に来ないで、近寄らないで、今後は一切あなたに会いたくない」
かつてエリカを虐めていた元婚約者の彼は、愛する女性から酷い言葉を多数かけられたことで精神崩壊し、しばらく泣くことしかできないような状態となった。それは数週間ほどで回復したのだが、その時には既に彼は壊れきっており、元婚約者の彼は毎日意味もなく笑って一人踊り続けるような状態となってしまった。彼は時に一週間近く踊り続けることもあって、世話をしなくてはならない家族は大変苦労していた。
こうしてエリカの復讐は終わった。
◆
エリカは生まれ変わった。
そして今度は幸せな場所に生を受けることができた。
彼女は温かな両親のもとですくすく育ち、王子と結ばれ、幸せに暮らした。
◆終わり◆




