恥をかかせようと思ったのか婚約者が人前で婚約破棄を告げてきましたが、意外な人の協力によって逆に恥をかかせることができました。
「君との婚約だが、本日をもって破棄とする」
お茶会の会場にて、婚約者アルペから急にそう告げられた。
彼の横には桃色のドレスをまとった見知らぬ女性がいて、その可愛らしいを絵に描いたような顔面にうっすらと黒い笑みを滲ませている。
その視線はこちらへ向いていて。
悪意があることは丸出し。
ここで婚約破棄を告げるよう指示したのももしかしたら彼女なのかもしれない。
「アルペ……これまた急ね、どうして?」
「彼女と生きることにしたんだよ」
「彼女って……そちらの女性のこと?」
その時だけ、女性はにっこり笑みを浮かべた。
「アルペ様にはいつもと~ってもお世話になっていますぅ~」
しかもそんなことを言ってくる。
わざとらしいにもほどがある……。
アルペはこのわざとらしさを不自然に思わないのだろうか……。
「ま、そういうことだから、君は今日はもう帰ってくれ。僕は今から彼女との婚約を皆に発表するんだ、そこに君は必要ない」
邪魔だから消えろと?
それはそれで不愉快だ。
「私、帰らないわ」
「え」
「あなたたちの発表を見守って祝うわね」
「ええっ。どうして、そんなっ」
「安心して? 邪魔なんてしないわよ。でも、見てみたいの」
「そ、そう……。まぁ、そういうことなら……」
女性はちっと舌打ちしていた。
その後、アルペとその新たな婚約者となる女性による婚約発表が行われた。
が、その最中。
「きゃあああ!」
「どうし……うっわ! 半裸!?」
女性の身にまとっていたものが突如消えて。
ほぼ下着だけの状態になってしまった。
肌を皆に見られることになる女性。
「アルペ様! 半裸とか言わないでください!」
「ご、ごめんよ……つい……」
その様子を見ていた男性陣はじゅるりとよだれの音を鳴らしてた。
しかしその数秒後。
「うわぁ! ふ、服が! 服が! どこいった!?」
今度はアルペが下着だけになってしまう。
「何あれ~気持ち悪~い」
「露出マニアとかないわ~」
「ま、でも、似合ってんじゃない? 夫婦で服脱いで」
こうして二人は笑い者になった。
その日の帰り道、あれが一体何だったのかを知ることとなる。
話しかけてきた一人の男性が種明かしをしたのだ。
彼の話によれば、あれは彼が使った『服剥ぎの術』だそうだ。勝手な理由で婚約破棄された私を気の毒に思った彼が、少しでも仕返しをしようと、その術をアルペらに対して使ったとのことである。
「まさかそんな術があったなんて……知りませんでした」
「大成功でしたよね」
「ええ……成功しすぎていて驚きなくらいです」
「ちょっとはすっきりしました?」
「え」
「どうです?」
あの光景を思い出すだけでも笑えてくる。
「はい。すっきりしましたよ、面白かったです」
◆
それから色々あって、私は、あの術を使って仕返ししてくれた男性と結婚することとなった。
彼は騎士団所属の騎士だった。
そう聞いた時は驚いたけれど。
でも彼と生きることに躊躇いはなかった。
今は彼の帰りを待つ日々だけれど近所の人が優しいこともあって生活には困っていない。
それに、彼と再会できた時の喜びはかなり大きいから、待つ時間だって苦痛ではないのだ。
彼と生きられることになって良かった。
それははっきりと言える。
ちなみに、アルペとその婚約者となる予定だった女性は、あれから皆から『裸族夫婦』と呼ばれるようになってしまったそうで。
女性の方はそれに耐えられず自ら死を選んだそうだ。
そしてアルペも、一族の恥さらしとして親戚から縁を切られ、今は一人寂しくお金のかからない野草を勝手に抜いて食べて生きているらしい。
◆終わり◆




