女好きな婚約者がやらかしているところに声をかけたことで激怒され婚約破棄されました。でも幸せになれました。ただし、私だけは、です。
私にはオテプレスという婚約者がいるのだが、彼はとにかく女好きな人だった。私という婚約者がいる状態でもなお女性とのかかわりはやめず。私がいるところででさえ、驚くほど積極的な接触を行っているくらいであった。
だが。
その晩、私は見てしまった――かつて私が彼に贈ったベッドの上で、彼が他の女性と深く関わっているところを。
それにはもう我慢ができなくて、飛び出していってしまって。
「何をしているのですか!?」
そう言ってしまったことで、すべてが壊れた。
彼は激怒したのだ。
女性との時間を邪魔した、と。
「可愛い彼女との楽しい時間をよくも邪魔しやがったな！ 許さん！ 絶対に許さない！ お前、婚約者か何か知らないが、いい加減にしろ！ ああもう腹立つ……もういい！ そんなことを言う女との紙の上だけの関係なんぞ終わりにしてやる！ お前との婚約は破棄だ!!」
激怒した彼は、関わっていた相手の女性が驚き戸惑っていることに気づきもせず、一方的に大声を発した――そして、私との関係を叩き切った。
「そうですか……そうですね、分かりました。では、私は消えますね」
私とて、下がることはできない。ここまでされて許すことはできないのだ。私だって人間だ、感情があり、快不快もある。だから何でもかんでも彼のしたいことを受け入れられるわけではない。
「さようなら。……これで失礼します」
こうして、私とオテプレスの関係は終わった。
◆
その後私は貴族の男性と結ばれた。
彼は寛容な人で。
かつて婚約破棄されたことがある女だと知りながらも受け入れてくれた。
そして、彼の両親もまた、同じく心の広い人たちで。過去に婚約破棄された経験がある私のことを悪く言うことはせず、拒みもしなかった。さらに、その時の事情についてもきちんと聞いてくれ、温かく「貴女は悪くない」と言ってくれた。
おかげで今がある。
愛する人と幸せに。
そんな未来に出会えたのはあの時婚約破棄されたから。
そういう意味では、あの不快な日々にも意味はあったのかもしれない。
ちなみにオテプレスはというと、あの後、既婚者であることを隠していた女性と深く関わり過ぎて女性の夫である人物に激怒されたそうで。激怒した女性の夫とその仲間に襲撃され、何が何だか分からないままに自宅で殺害されてしまったそうだ。
そうしてできた彼の墓には、ほぼ誰も来ないらしい。
ただ、女性の夫がやって来て墓石を破壊していくことだけは、時折あるそうだ。
◆終わり◆
