親は夢を受け入れてくれませんでした。普通の女性であることを強要してきました。が、婚約破棄を機に自力で夢を叶えることにしました。
騎士になることが夢だった。
でも駄目だと言われた。
両親には理解されなかった。
女の子がすることじゃない――そう言って、両親は、私が何度も読んでいた騎士の物語の本さえも奪い取った。
そうしてある程度の年になると、私は、親が連れてきた男性と婚約することに。私の人生は私が選ぶ、そうであったほしかったけれど、それすらも難しく。道は決まっていて。ただ敷かれたその道を行くしかない、そんな状態で。
だが婚約者オレスは私を嫌っているようだった。
「お前といると楽しくねーんだよ」
初めて一緒に過ごした日も、それだけ、一言しか言葉を貰えなかったほど。
それほどに私は嫌われていた。
◆
だが、少し経ったある日、もってこいな機会がやって来た。
「お前との婚約、破棄するわ」
そう、彼が、自ら関係を終わらせると言ってきたのだ。
こちらから切り捨てるのは難しい。女性から別れを告げるというだけでもよほどのことがないと難しいことだから。けれども、向こうが言ってきたなら、男側が言ってきたなら、話は別だ。彼が婚約破棄と言い出したなら、私は大人しくそれに従っているだけで解放されるのだ。
「承知しました」
「分かったか? 二度と俺の前に現れるなよ?」
「はい」
「じゃ、いい。これでな。ばいばい」
こうして私はオレスと離れることができた。
その後私は実家へは帰らず――都へ行き知り合いにお願いして回って、珍しい形ではあるものの騎士団に入ることができた。
そうして初めて居場所ができた。
そこでは誰も私を傷つけない。もちろん、雑用を押し付けられることはあるし辛い訓練もあるけれど。でも、それでも、私という存在をそのままの形で理解し受け入れてくれる。それが何より嬉しくて。ここでなら皆のために何でもしよう、と思えたほどであった。
こうして私は騎士となった。
幼き日の夢は叶った。
◆
あれから十五年、私は、女性で初めてとなる優秀騎士賞を受賞した。
ちなみにオレスはというと――私との婚約を破棄した直後に土砂災害に巻き込まれてしまって落命したそう。
災害による死とは、悲しいことだ。
◆終わり◆




