妹に婚約者ができました。その婚約者は、かつて私の婚約者だった人です。~そして二人は破滅しました~
妹に婚約者ができた。
だがその婚約者は元々私の婚約者であったオルフェという青年で。
そう、彼女は、私の婚約者を勝手にもぎ取っていったのである。
そんな事情があるから、どうしても、彼女の婚約を真っ直ぐに祝福はできなかった。
『悪いが、君との婚約は破棄する』
今でも思い出す。
オルフェからそう告げられた日のことを。
『お姉さまみたいな人、一人でいればいいのよっ。いいじゃない? 家はあるんだし。素敵な殿方なんて要らないでしょ? 精々親の介護でもしてれば?』
驚く私に、妹はこんなことを言ってきたのだ。
さらにオルフェも。
『僕は妹さんに惚れ惹かれている。姉妹だからと君で納得することはできない。だから、さよなら。君とはここまでにして、これからは、妹さんと生きてゆく。彼女との出会いを作ってくれたことだけは感謝するよ』
こちらの気持ちなんて一切考えずにそう言った。
酷いものだ。
二人して、言われる側の私の心なんて考えもせず。
◆
オルフェと妹が婚約して数ヶ月が経ったある日、妹が号泣して実家である私も暮らす家へと帰ってきた。
「婚約破棄されだぁぁぁああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁー」
妹は落ち着きを完全に失っていた。
「ちょっと他の男性と喋ってただけなのにぃぃぃぃぃいいいいぃぃぃぃ」
その後知ったのだが、妹はオルフェでない男性一人とも仲良くしていたそうなのだ。だがこれまではオルフェにはばれておらず、踏み込んだことをしても気づかれていなかったようなのだが。それがついにばれてしまい、オルフェから婚約破棄を告げられたそうだ。
「いやぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁー」
その日から、妹は、毎日のように大声を発しつつ泣くようになった。
◆
それから数週間が経ったある日、私は、妹がオルフェを刺し殺したことを知った。
毎日泣いていた彼女が人を殺した? いや、性格的には悪いこともしそうだが。ただ、それでも、どうしても信じられず。さすがにそこまでしないのではないか? そう思いもしていたのだけれど、その話は事実だったようで。事実、妹は殺人を犯していた。
妹はオルフェの家へ行き玄関前で「どうして捨てたのぉぉぉぉ!!」などと叫び続けたらしい。近所迷惑も考え困ったオルフェは彼女を家へ一旦入れたそうなのだが、それこそが罠。二人きりになるや否や、妹は隠し持っていた刃物でオルフェを刺したそうだ。で、妹は馬乗りになって刺し続けたらしい。
驚いた……。
そこまで精神が壊れていたとは……。
こうして、オルフェは亡くなり、妹は殺人の罪で拘束され――数ヶ月の取り調べの後に処刑された。
◆
あれから十年。
私はコーヒー店を営む青年と結婚し細やかな幸福を手に入れることができた。
◆終わり◆




